4.住人と定食

 木野がお腹がすいたと言うので最初に食堂に向かうことにした。

「えーと、食堂は…こっちか。」

 もらった案内地図を見ながら歩く二人。角をまがると目の前で大きな声が響いた。

「貴様らだな!村人を食らう悪党どもは!!」

 16、7歳くらいの女の子が木野を見て言った。ぱっと見て吸血鬼のようだ。

 沈黙が流れ、女の子は頭が真っ白になっていた。知らない人に見られたことが恥ずかしかったのであろう。木野がフォローする。

「…あ、えっと…違います…?」

「フォローになってねえよ。」

 そして女の子は顔を赤くし、こう言った。

「いや…あ、あのこれは劇の練習なんだ…!勘違いするな!やめろ!そんな目で見るな!」

 結構男勝りなのか口調が女の子っぽくない。

「ええと…新入りか?あたしの名前はよるだ。よろしくな。」

 新入りではないのだが一応挨拶しておく。

「木野ですー。で、こっちのが生き霊でーす。」

「こっちのいうな!」

 吸血鬼(たぶん)の女の子と別れ、二人は食堂へ足を進めた。

 食堂は広い空間が広がっていて、正面のステンドグラスが教会のようだ。長いテーブルが何列か並んでいる。

 注文しようとカウンターへ行くと、さっきの白髪の子がいた。

生き霊が言う

「あ、さっきの!」

 木野がフォローする

「さっきのっていっちゃ可哀想!」

「だからそれフォローになってねえよ」

 白髪の子が口を開く

「僕の名前はゼロ。やっぱりお客さんだったの?」

「えっ、ああ…まあ、そんなところだ」

 ゼロはここで料理を作っているらしい。そして、住人以外の霊界の人たちにも料理を出しているらしい。


「君も妖怪なの?」

 木野は気になったので聞いてみた。

「ようかい…じゃないよ。ただの幽霊だよ。」

 ただの幽霊っていうのも新しいが、ゼロは左目に包帯をしている。胸元にも包帯が見える。見た目はどちらかというとフランケンシュタインのようだ。


「お兄さん達も幽霊?」

「僕は人間だよ。で、こいつは生き霊。」

「そーなの?よろしくね。…あ、注文どうぞ。」


 二人はゼロに和食の定食を頼んだ。


 食べた。


 美味しくておかわりした。



「俺弟子入りしようかな…」

「えっ、まじか。」


 生き霊はゼロのファンになった。


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人間around @rindousigure

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