3.不思議な施設

 




少年がドアを開けた。そこにはドアの反対側の景色が見えるのではなく、図書館のように、本が壁一面に並んでいた。二人は一風変わった内装にも驚いたが、もちろんそんなことよりドアの向こうに部屋があることに驚いた。

 唖然としていると、部屋の中央の大きな木製の、いかにも年季が入った階段からさっきの少年とは別の人が降りてきた。見た目は二十?くらいだろうか。髪の毛は薄い紫色をしていた。

「こんにちは。僕の名前はフィックといいます。今日はどのようなご用件で?」

 そう言うと二人の向かいの椅子に腰を掛けた。

 先程の少年とは違い紳士的な口調である。そしてにこにこしている。

「あの、僕ら図書館に行こうとしてたのですが無くなっていて…えっと…」

 木野が言葉に詰まっているとフィックと名乗った青年は少し首をかしげた。

「あなた方はもしかして人間ですか?」

 …は?と木野は思った。それはそうだ。会話的に違和感のある台詞だ。

「えっと、それはどういう…?」

 フィックは少し考えてから言葉を発した。

「…ここは、人間界ではないんですよ。」

 ……え?えっ?何を言ってるんだこの人は…。ドッキリ的な何かかな?木野は考えを巡らす。

「ええと、その言葉からして僕はいまあの世に居るってことで…いいんですか……?」

 取り敢えず会話を続けた。

「いえ、あの世ではないです。ええと、分かりやすく言えばあの世と人間界の中間地点みたいなものです。」

「…じゃあ木野は生死の境目にいるってことか?」

 今まで空気のようだった生き霊が話しかける。

「おかしいんですよね。人間にここがいつもの図書館に見えないなんて。」

「えっ!僕死にそうなの!?!」

 驚く木野にフィックが言う。

「いえ、その可能性は低いですね。生死をさ迷っている人はここには来ません…しかし、何らかの繋がりがあるなら…」

 …もしかして…!生き霊のことか!二人は顔を見合わせた。

「それってもしかして俺が生き霊だからですか?」

 そう言うとフィックは驚いたように、笑った

「生き霊だったんですね!てっきり双子かと…だからこの世界に来れたんですね。」

「来て良かった…のかな?」

 生き霊は普通の人間には見えない。霊感のある人や他の生き霊、そして本人である木野にしか見えない。

「人間が来るなんて珍しいことですよ。」

 フィックはワクワクしているように見える。

「…あの、ここはどういう施設なんですか?」

 確かにそうだ。立派な建物であるからには何か役目があるはずだ。

「ここは先ほども言ったように霊界と人間界の境目です。ここにはたくさんの行き場をなくした子どもたちが暮らしています。死ぬに死ねない子、人間だった子以外にも妖怪の子どももいるんです。簡単に言うとマンションみたいなものです。」

 ほうほう…もうここまで来ると信じるしかないなと木野は思った。

「じゃあさっきの白髪の子も…?」

「そうです。何人かはここの運営を手伝ってくれているんです。彼もその一人で。いやー、助かりますね。昔は一人でやってたんですよ。」

 フィックは笑った。いや、会ったときからずっとにこにこしているのだが。

「まあ、ゆっくりしていってください。」

 そう言ってお辞儀し、階段を登って行った。

 …というわけで僕達は施設を探険することにした!

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