2.消えた図書館





 二人は整った並木道を歩いていた。この街は緑も多く、過ごしやすいので住宅街がひろがっている。大きな公園も近くにある。

「…この街ってよ、なんかすぐに新しい建物建つよなー。」

「そうだね。新しい図書館とか造ってくれないかな?」

 今向かっている図書館は相当年季がはいっている。

「あの図書館創立何年なんだ?けっこーぼろぼろだよな?」

「んー…入り口のところの石碑には1920って書いてたかな?たしか。」

「90年くらいか!?すげーな!」

 古い図書館だが、とても大規模で本の種類も豊富だ。少し遠くからでも図書館はしっかり見えるほどの大きさだ。

 歩いていると生き霊が違和感を感じた。

「…なぁ、なんかおかしくね?」

 違和感の正体…それは……

「え……うそ…」

 木野も気付いたらしい。数十メートル離れたところで、いつもここから見えるはずの図書館が見えない。

 木野はあわてて門まで駆け寄った。

 ……そこには異様な風景が広がっていた。


「図書館が……ない……!?」

 木野は目を疑った。信じられないと言わんばかりに立ち尽くしていた。

 そんな彼を見ながら生き霊はあとから遅れてやってきた。

 図書館のあった場所には大きな木製のドアがただただあった。しかし、ドアだけなので広い土と草花の敷地がよく見渡せた。

 木野は言葉を紡いだ。

「おかしいよね……?だって昨日まであったじゃん。1日で片付けられるはずないよ...?」

「それもそーだよな。夢なんじゃね?」

 二人はほっぺをつねり合ったが、痛かった。

「…帰るか?」

「……」

 相当ショックなのだろう木野はなにも話さない。

「あ、あーじゃあさ、あのドア入ってみよーぜ?」

 ドア1枚なので入ったところで通り抜けてしまうのは目にみえているが、生き霊はそれでもあまり乗り気じゃない木野を押しながらドアまでたどり着いた。

「まあまあ、気持ちは分かるけどよ…」

「……だって、絶対おかしいよ……いきなりすぎる…じゃん…」

 木野の心は今にも壊れそうだ。すでにもう壊れているかもしれない。

 あいにくこの街には図書館はここしかなかった。ここ以外に図書館といったら車で1時間もかかる。病人の木野にとっては毎日行ける距離ではない。

「…何て言うかさ…その…ほら!きっと新たな新世界の幕開けが待ってるんだよ!な?」

「なにその慰め方…」

 取っ手に手を掛けた生き霊が何か気配を感じた。

「っ!?誰だ!!?」

 後ろを向くと木野の隣に色の白い少年がビニールの袋を持って立っていた。木野は気づいていなかったようで慌てて生き霊の後ろへまわる。白い少年は二人に少し近づくと少し考えてから口を開いた。

「…もしかして、お客さんなの?」

 話し方がいように子供じみていた。そんな少年の言葉に二人は「?」を頭に浮かべた。

「入って。中にあるイスのところで座ってて。」

 二人は何がなんだか分からなくなったが、少年の次の行動で知ることになる。

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