人間around

@rindousigure

1.生き霊




 某都市総合病院



 504号室には入院している一人の青年がいる。


 青年は幼い頃から体が弱かった。あまり学校へ行くことがなかったので、仲の良い友達はいない。


 青年は本を読むのが好きだった。暇があれば近くの図書館へ本を借りに行った。今も、病室のベッドの上で静かに本を読んでいる。



 窓の外からは子供たちの楽しげな声が聞こえてくる。


 



「「「 バーーン!!!!」」」


 と、病室の扉が勢いよく開いた。



「4階の冬季限定苺ケーキ仕様苺たっぷり苺ミルクがなくなってたあ!!!!!!!」



 と窓の外の子どもたちの声をかき消して入ってきた青年がいた。



「あたりまえでしょ…冬季限定なんだから」


 ベッドの上の青年が言う。ちなみに、彼の読んでいる本はクライマックスに差し掛かっている。


「俺の生き甲斐がっ…!」


 こちらの青年は膝から崩れていく。


「ていうか、生きてないでしょ…」


 そう、生きていない。この生き甲斐をなくしたやつはベッドの上の青年の生き霊なのだ。




 彼らの出会いは2週間前。突然姿を現した自分そっくりな生き霊に青年はひどく驚いた。現れた理由はわからない。





 生き霊は気を取り直して言った。

「木野、今日の予定は?」

 立ち直りが早いのが彼のいいところだ。

「これもうすぐ読み終わるから図書館にいこうかなと。」

「はあ?またかよ。ここんとこ毎日じゃん。…まあ、別にいいけどさ。暇だし。」

「やったね」


 と、こんな感じの二人は図書館へ向かうことにした。




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