第3話 夜中は前日です
今回はなぜこうなるのか理解し難い、良くある話を。
朝の二時、持ち回りの緊急電話が鳴る。 無慈悲に。 無感情に。 まるで私の奴隷になりなさいと叫ぶかのように。
「チェックインしたいんだけどオフィス閉まってんだけど! どういう事?!」
女の苛立ちが端々から読み取れる声が、寝起きの豚耳を割く。(この日は満室で、珍しく八時前に全員チェックインしたのを確認済み)
「……こんばんは。 ふむ、おかしいですね。 今日ご滞在の皆様方は全員チェックインされているのですが」
「見ての通り私はしてないわよ? どうしてくれるのよ」 ねっとりとした嫌味が即座に飛んで来る
「少々お待ち下さい、確認させていただきます」
「早くしてよね、こっちは疲れてるし眠いんだから」
(私も眠いわksg) 「はい了解です」
眠いと叫ぶ贅肉に鞭を打ち、パソコンを立ち上げて、ネットに繋ぐ。 今の世の中、とっても便利になったものだ。 さっさとチャートを呼び出して確認する。
「お待たせしました、お名前または予約番号をお願いします」
想像通り予約番号なんて今持ってないわよ馬鹿、と言われ名前で検索する。
今 日 チ ェ ッ ク イ ン の 予 定 の 客 じ ゃ ね ー か 。
「……お客様、チェックインは今日からとなっております。 昨日ではありません」
「だから今日来たのよ。 さっさと開けなさいよ」
つまり今寝てる客を追い出せとな? Wow!
「お客様、」見えないとわかっているが、とびきりの笑顔と声音で教えてさし上げる。「チェックインは今日の、午 後 か ら、となっております。 お客様がお使いになったサイトにもそうきちんと記されております。 また、今日は満室でして、どちらにせよ今夜のお客様のご滞在は不可能となっております。 チェックアウトは朝十一時、でございますのでそれまではどちらにせよ「前夜」でございます。 どうぞ今日の、午 後、においでくださいまし」馬鹿野郎。
「じゃあどうすればいいのよ!」
「大きなホテルなら空いてるのでは?」 眠いから切っていいかな? 近くのモールはトイレこそ閉まってるものの24時間出入りは自由だし水もあるけど、教えてやる義理なんてねーし、しーらね。 水もトイレもあるうちの廊下で待機させてやる方法もあるけど、しーらね。 態度悪い奴なんて助けてやるかバーカ。 伊達で贅肉落とせねぇ訳じゃないんだよ。 てか昨日確かコンサートかなんかあったはずだし、でかい所も満室の可能性が高いかな。
「ちょっと……」
「他に御用が無ければ切らせていただきますね」
ぶちっと切った。 基本、こう切れば大体の奴はかけなおしてこない。 きても最悪の場合、電源きってトイレ行って入れなおせば諦めてるし。 ドアの前で騒いだら警察呼べばいいねん。 そもそも今の時点じゃなんの義理も義務もない……つまり、客じゃない。 客になってくれる可能性がある奴ってだけだ。 アホほどそこを勘違いする。 拒否する権利は双方にあるのでござるよ。
ああ、頭がいたい。 冷凍庫においてあるアイスを食べたいけど、歯磨いちゃったから我慢我慢。
(この対応は同じ体型の先輩がビシっとやってくれた体験談(愚痴)を私の言葉で書いております。 また、この対応の仕方について、上は先輩を褒めてました)
宿泊施設とお客と私(豚) @Albatross
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