第2話 チェックインは午後からです



 夏のある日。



 朝も早くから起き、身支度を整えて、元気があれば朝食を作る。 なければ何か持っていくか買って誰もいないオフィスで食べる、そんな日常をまたも過ごすはずだったある日。


 電話がかかってきました。 現在、オープン前一時間半。 基本一時間前から準備を始めるので、実質30分前。


 「おはようございます、ご用件をお伺いします!」

いつものように力の限り人懐っこい笑顔でブヒブヒ聞く。 見られてなくても笑顔を作ると高い声が出しやすいのだ。

 「今開いてんのか?」 不機嫌そうな男の声が飛び出してきた。

 「はい?」 態度が悪い、質問がいきなり過ぎてわけわかんない。 なにこいつ。

 「開いてんのかって聞いてんだけど」

 「……ええ、現在開いておりますが」

 「二時間前に行ったんだけどさー、閉まってたんだけど」 知るか玉もげろ。 腹減ってイライラしてるし、そもそも仕事前だし、いーや攻めよっと☆

 「ええ、営業開始時間は一時間後ですから、それは閉まってるに決まってますねぇ」

小学生からやりなおしたらどうかしら。 うふふ。

 「……あ、そう。 そういや玄関のドアってどうあけりゃいいんだよ? コードとかアンの?」

 「オフィスが開いておりますので、現在押せばよろしいだけですよ」

 「あ、そうなの。 じゃあすぐ行くわ」

 「はい、前夜は満室でしたのでご案内できるお部屋はございませんが、お荷物のお預かりは可能となっております」


 電話を切られた。 どこまでも失礼な野郎だな。 2部屋空いてるけど部屋のタイプ合ってても後で戻ってこいって言おう。 朝にご到着予定のお客様方、他にも居るっぽいし。 ぶるぅん!と腹の贅肉を揺らしながら高椅子に座って胡桃バナナマフィンとチョコレートクロワッサンを取り出す。 苦い冷たいアイスコーヒーで口直ししながらチョコとバターと胡桃たっぷりの両名を貪り指まで舐めて、一休み。 ああ、幸せ。 

 チョコをふわふわぱりぱりのクロワッサンの中に入れようとか思いついたお方は私の神です。 崇め奉ります。




 ちな電話の主は昼近くに来ました。 典型的な勘違いタンクトップゴリラで草生えたわ。

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