「神様」のいない世界

一宮かなた

黒の白い夢

 正夢なんてそんなものは起こった後に思い返してみればそんな気がしただけで起こらなければ思い出すことも無い。

 だから、今日見たこの夢もになんかならない。



幹也みきや!早くしないと遅刻するわよ!」

「うーん。」

 時計を見るとまだ6時。8時に家を出ても間に合うのに遅刻なんかするはず無い。(なんで母親って時間の考え方が先走りしてるんだろう)すぐに布団から出る。ダラダラしてるとまたうるさい。

「さむっ」

 春になってもこの辺の地域はまだまだ寒い。4月に入ってからも雪が降ることなどざらだ。今日もまた朝から雪が降っているーーー。

「幹也、聞いた?城田しろたさんちの横、空き家になってたじゃない?そこに誰かが引っ越してきたらしいの。今朝チラッと見たけど幹也と同い年くらいの子だったわ。でもフード被ってて顔が全然分からなかったの。」

「ふーん。」

「あら?興味無いの?かわいい女の子かもしれないじゃない。」

「そーだね。」

 確かにこんな田舎に誰かが引っ越してくることなんてないけど今さら高校生にもなって小学生みたいに転校生なんかではしゃいだりしない。知らないやつが一人増えたところで何かが変わるわけでもない。

「きをつけてねー、いってらっしゃーい。」

「いってきまーす。」


「幹也!おはよー!」

「おはよ」

「ねぇ聞いた?うちの学校に転校生が来るんだって!しかも高2!どんな子かな?」

 うちの学校は生徒数が少ないから小学校から高校までほぼ学年に1クラスの状態だ。自分があまり興味なくてもやはりクラスの奴らは気になるようで、皆そわそわしている。


「おい、席つけ。おし、皆いるな。」

ともくん早くしてよー、転校生いるんでしょ?」

「おまえら小学生か!言われなくても後で紹介するから待っとけ!」

 友くんとは俺らの担任だ。よくこんなんで教師になれたなと思うくらいガラが悪い。この町出身で俺らにとっちゃ担任というよりただの近所のおじさんだ。

「はい、じゃあお前らお待ちかねの転校生だ。」


・・・・・・?


 あんなに楽しみにしてたはずなのに誰も声をあげない。不思議に思って転校生を見る。

1度も日に当たったことのないような真っ白な肌。


線も細い。


髪は・・・・・・白?(・・・え?なに?都会ってみんな髪染めてるもんなの?地毛?というか、こんなに綺麗な人がこの世に存在しちゃっていいのか?)

三上みかみ春人はるとです。東京から来ました。よろしくお願いします。」


ザワッ



 ・・・男?

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「神様」のいない世界 一宮かなた @Honto-Hito

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