人間が「死」を克服し、肉体の死の後も、仮想空間で生き延びている、という世界を描いた短編。

死があるからこそ、生を感じられる。そういった、当たり前のことを再確認させてくれる、すばらしい短編小説でした。

　じんわりと、深く染み入るような温もりに満ちた物語でした。
　そう遠くない未来に、魂の複製が可能になり、死と魂の概念は変わってしまうでしょう。作中で提示されるような人格のメモリーか、それとも今研究が進められている、ソーシャルネットワークや日記、他者の記憶といった記録から積み上げる復元人格か。
　しかしそれらの技術は、人の心の在り方まで変えてしまうわけじゃない。絶対に正しい倫理や道徳なんて存在しないまま、技術だけがどんどん前に進んでしまう。
　大事なのは、自分の心で受け止め、そして、何が大切かを選ぶこと。作中で、父がそうしたように。

　遠ざかっていく父の背中は、少女の心に何を残しただろうか。少女はどちらを選ぶだろうか。
　それはきっと、私たちにとっても、大事な答えなんです。

シリアスな作品です。
私はこの作者を誤解していました……(すみません)
死を乗り越えることの「デメリット」とは何なのだろう？
作中、「データ化にデメリットはない」という言葉が出てきて、しばし、作者と一緒になってその言葉への反抗を試みました。
たぶん、そんな読み方でもいいんだと思います。
この作品は、そっと、大事な問題を提示してくれています。
もちろん、一つの解答も……

考えさせられました。
亡くなった人の人格を保存できる近未来。
「死」という概念が現代とは異なり、軽いものとして捉えられています。

しかし、主人公の父親が選んだ道は少し違うみたいです。
そして、主人公もそんな父親から何か大切なことを学んだのでしょう。

今この世界に生きている私たちは、人間が死ぬ悲しみを、次の世代に伝えていかなくてはいけないのではないでしょうか。

　科学・技術が進むほど、経済・社会は豊かになると共に複雑化・加速化して、そのような経済・社会を健全に保ち続けるための制度・政策も高度化・巨大化・分権化します。この作品世界では本人の立場や居住地域、手続きの状況などによって、『保存』が義務づけられることもあるのでしょうか？　もしも現実にこのような技術ができたとしたら、どうなるのでしょうか？
考えさせられました。

　

タイトルに騙されました。
気分的に笑う準備をして読み始めたら、笑いでなくて涙が出ました。
主人公のお父さんが私の亡くなった家族によく似ていて、客観的に読めなくなったこともありますが。
着眼点がすばらしいなぁと思います。
大好きな星新一さんを彷彿とさせられました。

短編には星MAX２つの信条なだけで、読者を深く考え込ませる、良い短編だと思いました。
死ぬ本人としては、登場人物と同じ行動を取るでしょうね。死んだら終わりですから。
でも、残される家族のことを考えると、悩んでしまいますね。
でも、短編中の”世の中”の有り様は欺瞞だとも思います。
作者に拍手を送ります。