タタタタタタッ
言葉殺し
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タタタタタタッ。
タタタタタタッ。
タタタタタタッ。
何かを叩きつけるような音が鼓膜を震わせる。
抑揚もなければ強弱も高低もない。
そんな音だから宿る意味も無い。
すっかり別人になってしまった目の前の鋭い瞳を見ていると、胸の中で何かが裂ける感覚がした。
殴られた頬はじんじんするし、腹の中がとても熱い。強烈な吐き気を催している。そんな状態だけど、音は耳の中を大音量で流れ続ける。
意味を持たない音の羅列に何かを感じるなんてありえない。そう思うとのと同じくらい、何も感じないなんてありえないとも思う。
タタタタタタッ。
言葉は聞こえないから、唇の形を読んだ。
ああえお。
ああえお………ああえお………。
その母音に当てはまる言葉を探す。
ああえお……ああえお………。
……ああ。
「笑えよ」
そのメッセージを受け取ったとき、溜息とも笑いとも取れるような、曖昧な吐息が唇から流れた。
タタタタタタッ。
この音が崩壊の音だと気づくには、まだまだ時間がかかるようだ。
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