第7話 粗末な管理
「嘘だと言ってくれ」
悟性は執務室の机に項垂れながら、悲しそうに言う。
「一体悟性様に何があったんだ?」
「武器を確認するため武器庫に行ったのですが、半分以上が使い物にならないことがわかると、ああなってしまわれて……」
ジョンの質問に対して、ユラが説明をする。
「なんで……なんで……金か? 金がなかったのか? それとも、魔法が強力過ぎて武器なんて必要ないのか?」
「……悟性様、何か勘違いをされているようなので訂正させて頂きますと、魔法は近接戦の補助的存在であり、それ程強力なものではありません。一部例外的な力を持つ者はいますが、大抵は目くらまし程度のことしかできません」
机を軽く叩きながら言っていた悟性に向かって、メイはそう言った。
魔法が目くらまし程度のことしかできないだって?
それは安心すればいいのか?
魔法によって戦況が決まるわけではないと?
それとも怒るべきなのか?
なら何故武器の管理が粗末なのだと。
悟性はそんなことを思いながら、唖然とした表情でメイを見つめる。
「さらにもう一つ申し上げますと、武器の管理体系を考えられたのは……前国王陛下です」
あのじじい、次会ったらただじゃおかねー!
今のところ、この国を悪くしてるのは大体あのじじいが絡んでやがる。
もうほんといやになってくるぜ。
1週間ぐらい部屋に籠って、この国に関することについて詳しく調べたいよ。
……だがそんな悠長なこと言ってられる状況じゃないんだよな。
悟性はそう考える。
「……もうよろしいのですか?」
「大丈夫。それに案も浮かんだしね」
悟性はそう言って、メイに向かってサムズアップをする。
「それはよかったです」
「怒りを力に変えた、みたいな感じだけどね。とりあえずユラさん、この町にいる商人の中で、お金を一番持ってる3人と同じ日、同じ時間に会えるように手配してくれない? できれば早い方が嬉しいんだけど、もちろん国王であることは伏せてね。頼める?」
「もちろんでございます、悟性様。私にお任せください」
「ありがとう、助かるよ」
「いえ、当然のことでございます。それでは失礼いたします」
ユラはそう言って、部屋を出て行った。
「悟性様、商人に武器を提供させるおつもりでしたら、考え直してください」
「そんなデメリットの方が大きい、遺恨を残すようなことはしないよ」
「なら、商人と会って何をするおつもりなのですか?」
「何って、取引に決まってるじゃん。商人てのは、義にうすく、利に目聡い人間だからね」
「それはそうですが、一体何を取引材料にされるおつもりですか? 商人からして利があるものなどないと思うのですが?」
「それもそれでどうかと思うけど……ないなら作ればいいだけの話だよ。2人にはまだ言ってなかったけど、俺ってこの世界とは違う、別の世界から来たんだ。て言っても知ってるのはユラさんだけなんだけどね」
悟性がそう言うと、今まで喋っていたジョンは目を丸くした。
メイは何故か、とても嬉しそうな表情をしている。
「だから簡単にうまくいくと思うんだよね、後はどれだけ多く手に入れることができるかが勝負になってくると思うんだ」
悟性はそう言いながら、商人との取引のことを考えるのであった。
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