私は初老のサラリーマン。
本日、退社時に新入社員の部下から
「時織さん、いつも退社時に『疲れたぁ』って、溜息吐きますよね」
と指摘されてしまった。反応できずに口籠る。彼女が続けて言うには
「私も溜息を吐くようになりました」
だって。脱力した感じで。
「仕方ないよ。金を貰ってるもん」
と、思わず本音。如何にも草臥れたオジン。
部下を弁護しておくと、仕事に追われつつも、自身の成長を目指してます。本作品の主人公はアラサーの中堅ですが、件の女性新入社員と同類。私とは別種です。
同世代の読者なら励みになるだろうし、私みたいに先の見えた者でも元気を貰えます。
良い作品です。
『ヒーローは眠らない』の続編。
良い作品を作ろうとする人々が相変わらず衝突する物語。関わる人々が増えれば増えるほど、作品を作るのが難しくなるというのが、読んでいてよく理解できる。
プロだからこそ自分の仕事を第一に考える。他の誰かに苦労を強いることもある。場合によっては何か(誰か)を犠牲にすることだってある。もちろん逆に犠牲にされる場合だってあるだろう。
『立場』や『肩書き』、『個人的事情』による『断絶』がもう清々しいほどに盛り込まれている作品だと思う。読んでいて『一番苦労した人は誰だったのだろうか』と考えてしまう。
もっともその断絶が『悪い意味だけではない』というのも、この作品の魅力になっている。互いに衝突しながらも、その中で妥協点を見つけ、結果を出すのもプロなのである。スポンサーだってけっして『駄作』を求めているわけではないのだ。たぶん。
その反面、幾つかのエピソードから『結果さえ出せれば何をしてもいいのだろうか?』というような問い掛けも作品には込められている気がする。
読んでいていろんなことを考えてしまう作品。
序盤の『カエルのエピソード』も、それぞれの立場から考えてみると面白い。
果たして誰が一番正しいことを言っているだろうか?
これも読者によって答えが違うのではないかと思う。
他にも登場人物に奇妙な共通点があったり、前作よりも構造的に複雑なのかナーと感じました。
続編として更に世界観を広げてくれる作品なのですが、終盤付近に幾つか気になる部分もあるため、今回は星二つということになりました。ですが、前作を楽しんだ方ならば楽しめる内容になっていると思います。
続編があればいいなーと思いつつ、レビュー終わり。