高度に発達した科学は悪夢と区別がつかない

サイバーパンクといえば科学技術による身体拡張。では、もし機械による身体拡張が実現した場合、どのような層が一番恩恵を受けるのか? セレブ? スポーツ選手? それともアウトロー? 色々な可能性があるが、実際のところ機械化が一番ありがたいのは高齢者層ではないだろうか。人間誰もが歳を取り身体の不調は増えていく一方。そうなった時に機械で身体機能を補えるというのは大変大きなメリットである。

そんなわけで本作に登場するおばあちゃんも体を機械化されている。頭部以外はほとんどメカに置き換えられており、特に人間の形にこだわる必要もないので胴体はムカデっぽい形状になっている。脚が16対もあってとっても便利! 宗教の勧誘もあっさり撃退できる! お年寄りにつきものの物忘れに対しても海馬を量子メモリで補助することで完璧な対応だ! 凄いや量子コンピューターおばあちゃん! イェイイイェイ! しかし進みすぎた科学技術が人間に牙を剥くというのはSFの典型であるわけで……。

そんなおばあちゃんと孫の日常を描いた本作品。冒頭の「ウワーッ! 仏壇から内臓が!」という超パワーワードで一気に持っていかれるし、その後のサイボーグと化したおばあちゃんの数々の奇行は強烈過ぎて笑いが止まらない。なのに読み終わってみると何ともいえない寂しい気持ちにさせられる唯一無二の作品だ。


(「サイバーパンク的な近未来にひたれる作品」特集/文=柿崎 憲)

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