✬ドラゴン寮その✬

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ここは繁華街、その一角にある居酒屋【肉民(にくたみ)】である。

何故、真昼間から居酒屋に足を運んでいるかと言うと、まぁあれだ。

教員として多年(たねん)の鬱憤(うっぷん)が積もりに積もり、溜まっていたのだろう、その男に誘われてって事ではあるのだが、まぁ料理は美味しいし何より、今も酒を飲んでは愚痴を吐きまくっている隣の男が奢ってくれると言うから、うん、よしとしよう。

そうしなければ、今のこの現状にいよいよ店全てを氷の氷像としてしまい兼ねない。



「だかぁぁらぁぁぁあ、わぁたぁぁあしわぁぁぁこぉぉぉのぉぉぉぉぉ魔術ぎゃっこぉぉおを、がぁえだい‼︎」

(だから、私はこの魔術学校を変えたい‼︎)

と、叫んでいるこの隣の男は、先程出会った当初の優雅さは何処へやら、今はまるで別人だ。

「あのーそろそろ私達お暇(いとま)してもよろしいでしょうか?」

と、アリアナは酔っぱらいの男、バロン教員に言うが、

「まぁぁあたぁ、そぉうやってぇぇぇえみぃぃぃいんなぁぁぁぼかぁをおいてぇいくぅんだぁぁあ」

(また、そうやってみんな僕を置いていくんだ)

と、酔っぱらいの男、バロン教員は今度は泣き出す始末だ。

面倒くさい。

「そだよー置いてくよールンちゃんダンスの練習しなきゃだしー」

とルーナは、いつもの調子で言うと、ご馳走様でしたぁと言って、

「ほら、アリアリも行くよ」

と、言ってアリアナを引っ張ると脱兎(だっと)の如(ごと)くお店を出て言った。

あまりの速さに、そして自分は生贄に捧げられた事に気づいたフロストは、

「あ、ちょ、お前ら‼︎覚えとけよー‼︎」

と、叫ぶ事しか出来なかった。

「きぃみぃは、どぉぉぉおこぉぉにもぉぉいかなぁぁぁぁあいよぉぉねぇぇ」

(君は何処にも行かないよね?)

と、フロストの左腕に捕まる教員を見やると

「面倒くさッ‼︎」

と、呟くのだった。


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そうして店を出たアリアナとレゾナの前に、

「あ?お前らも二軒目探しか?」

と、お食事処【一万円】を出て更に食べ足りないのか次の店を探していたヤナギが現れる。

「いやいや、貴方みたいにそんな食べないわよ」

何を言っているんだ、とばかりにアリアナはヤナギに言う。

「ルンちゃん達お腹いっぱいだしー、あ、そーだ、すぐそこの【肉民(にくたみ)】いけば?まだフロスト君もいるしそれに」

と続けて、私達みんなバロン先生に奢って貰ったからヤナギ君も奢って貰えるよ、と伝える。

「なに、マジか‼︎よっしゃぁ‼︎」

と元気に居酒屋【肉民(にくたみ)】に走っていくヤナギを横目にニヤリと笑う2人の女生徒の姿がそこにあった。


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「おい、フロスト‼︎奢って貰えるんだって?」

と今しがたフロストの前に現れた、満面の笑みの男ヤナギ。

少しばかり呆気にとられ、そして、

(あいつら‼︎ナイス‼︎)

とフロストは心の中で呟くと、

「おぉ良いところに来た、ヤナギ君‼︎なんでもこちらの先生が全部奢ってくれるらしいから好きなだけ食べて良いよ」

と言ってフロストは立ち、今の今まで座っていた席にヤナギを座らせると、

「ちょっと僕も用事あるから、後よろしくね‼︎それじゃ‼︎」

と言ってスタコラサッサといった具合にお店を出て言った。


その日の深夜、夜遅くに酔っぱらってヤナギはドラゴン寮に帰宅してきたのだが、なんでもあの後、この時間まで店を転々としながら(あの教員と)飲み歩いていたらしい。

そして、「お前ら覚えてろ」

と恨み辛みを残して、談話室のソファーでイビキをかきながら寝ていたのだった。


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✪氷の魔術師と雷少女✪ 兎丸RABIさん♪ @rabi4589

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