第4話 ハイパー爺さん
よく40歳代の人が、「もう俺ぐらいの年になるとパソコンは勉強してもわからない。」と言っているのを耳にするが、そんなことはない。80に近いと思われるお爺さんでも、パソコンを使いこなしているのだ。
とにかく、その人はよく物を買いに来る。しかし、特別ほしい物があるわけでも、パソコンについて特に深い知識があるわけでもない。ただ、パソコンライフを快適なものにしたいというだけでいろんな物を買っていってくれるのだ。たとえば、
お爺さん:「パソコンのハードディスクがいっぱいになったんで、もう1台ハードディスクを買いにきたんじゃけどなあ」
店員:「そうですか、でしたらこの大容量のタイプの物がいいですよ。」
お爺さん:「ほうかあ、じゃあ、それもらおうか」
そういって気前よく買っていってくれる。そして2,3ヶ月後……。
お爺さん:「このまえもらっていったハードディスクな、あれもいっぱいになってしもたんじゃ」
店員:「えっ、そうなんですか。」
お爺さん:「ああ、なにしろデータがいっぱいあるんでなあ。」
店員:「じゃあ、このMOがいいですよ。これなら、メディアを入れ替えるだけでいいですから」
お爺さん:「ほうかあ、じゃあ、それもらおうか」
こうして、またまた気前よく買ってくれるのだ。しかし、今よりHDDの容量がずっと少なかった時代とはいえ、動画配信なんてなかった当時、増設しても足りないほど何のデータをためているのだろうか。
そしてまた2,3ヶ月が過ぎ……。
お爺さん:「実はなあ、通信の制御用に、もう一台パソコンががほしいんじゃけんどなあ」
店員:「あ、そうですか。どんなタイプがいいですか」
お爺さん:「ほうやなあ、なるべく小さいのがいいなあ」
店員:「ああ、ノートタイプですか?」
お爺さん:「いやいや、ノートでは都合が悪いんよ」
そういうと、鞄から巻き尺を取り出し、展示してあるパソコンのサイズを一台一台測っていく。そしてある本体を測り終え、
お爺さん:「これがええなあ。これもらおうか。サイズがうちの机にぴったりや」
そのお爺さんにとって、パソコンを買う基準とは、値段でも性能でもなく「家の机のサイズに合うかどうか」だったのだ!
そしてさらに、
お爺さん:「けど、これ買うと、プリンター置くところがなくなるからなあ。なんぞ、台みたいなもんあらへんかなあ」
店員:「でしたら、ふつうの机に置くより、パソコンラックを使う方がいいんじゃないですか?」
お爺さん:「ほうかあ、じゃあ、それもらおうか」
こうして、にこにこしながらお金を払ってくれる。
まあ、パソコンを性能や値段で選ばないというのは結構店員泣かせなのだが、このお爺さんのことをちょっとうらやましく思ったりもした。
指先をよく使う人は痴呆症にならないとも言われている。これを読んでいる人も、「ハイパー爺さん(あるいはハイパー婆さん)」を目指してはいかがだろうか。
パソコン界の困ったちゃん エール @legacy272
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