これは僕が死ぬまでのたった三ヶ月の物語

壬生太郎

第1話  始まる

零六月二十七日


ガラガラガラ


大学の教室、向かって後方のドアから入る

彼は一時間目の講義に出るために教室を訪れた


ペシャ!

顔に飛んでくる液体に顔を歪めるものが一人。

箱庭利明はこにわとしあき

「………」

相反して顔面と腹の筋肉をフルに活用し、この上ない幸福感を味わうものが一人

形振内側なりふりうちがわ、ボブヘアーで、顔のみ美形のなんというか全体的に低レベルな女だ。特に性格とか…

「むっはははははは!!」


どうやら顔に飛んできたのは彼女が手にしているスクイズボトルの中身だったようだ。

「おい…お前何歳いくつだ…」


「今年で20だけど?なんで?」


さらに表情が歪む箱庭はガクッと肩を落とし入れるべき突っ込みを入れる気力をすべて没収された。

(悪戯のレベルが低すぎる………)

仕方なく席に着く。扉に近い前のほうの空いてる席に。

隣には形振外側なりふりそとがわ

そう、さっきの変な奴の親族だ。それも双子で顔以外は似ても似つかないビジュアルをしている。ロングヘア―の美形だが…


「おはよう」


「…………」


挨拶どころか会話もままならないほどに無口である。

普通に素朴に疑問が浮かぶ

(こいつら家でどんな感じなんだ…)


しかし解決する気力もないので朝早めに目が覚めたのを言い訳に講義が始まるまで寝ることにする。


〔カチン!………コンッ!〕(甲高い衝突音)


(ん?結構寝ちゃったか)

「………あれ?教授は?」

その問いに答えたのは前の席にいつの間にか座っていた松谷味彩まつやあじさいだ。ダントツで成績がビリのこの男。実は学年で一番


「なんか全然来る気配ないんだよね。もう40分近くたってるし」


「40?チャイムから?」


「ちゃいむから」


(だいぶ熟睡してたか…チャイムも聞こえなかった)

ここでふと思い出す。


「あじさいさぁ、さっきなんか金属的なものがぶつかる音しなかった?」


「は?誰かペンでも落としたんだろ。知らん」


「あっそ。じゃあ夢だわ」


ガラガラ


教授が来た。みんなそう思った。

いや、教授は来たのだが厳密にはそうではなかった


が倒れこむように入室してくる




これは僕が死ぬまでのたった三ヶ月の物語







クハハ



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