創作を志す方への参考になればと
小説家はしばしば、執筆前にこういうプロットや狙いをまとめた企画書を書き、出版社に提出します。「だいたいこういう話です」という構想を編集さんに示すわけですね。それで編集さんからGOサインが出れば、執筆に取りかかります。
この『詩羽のいる街』の企画書は2006年11月に書いたもの。その前の『アイの物語』(角川書店)がそこそこ当たったので、編集さんに「次も『泣ける系』の話を」と言われ、20年以上前のアマチュア時代からこつこつと構想していた話をプロットにまとめてみたわけです。
この約1年後、2007年12月に執筆を開始。雑誌〈野性時代〉2008年3月号より4回連載され、その年のうちに単行本になりました。
『詩羽のいる街』
http://homepage3.nifty.com/hirorin/shiiha00.htm
企画書はあくまで「だいたいこういう話です」と示すものですから、ここに書いたプロットの通りに書かなくてはいけないわけではありません。途中で考えが変わって、プロットと違う話になる場合もよくあります。『プロジェクトぴあの』(PHP研究所)の企画書なんて、完成した作品とぜんぜん違ってたりします(笑)。
この『詩羽のいる街』の場合、わりと企画書通りになった例なんですが、それでも2話や4話なんて、語り手の設定からして違ってます。完成した作品と見比べてみれば、初期の構想からどこをどう変えたか分かると思います。
最も大きな違いは、作中作『戦場の魔法少女』が出てこないことと、最終話のイベントが単なる「賀来野まつり」で、「ガルテリ・オリエンテーリング」がないことです。
こんな風に変わったきっかけは、連載原稿の執筆開始直前の2007年12月2日、鷲宮町で開かれた『らき☆すた』イベントのニュースを見たことでした。それをヒントに、単なる祭りではなく、「地元と一体化したアニメイベント」にしようと思いついたわけです。これで最終話は盛り上がるはず!
そこから遡って、ストーリー全体を〈マンガ〉をキーワードに構成し直しました。この時点で『戦場の魔法少女』を組みこむことにしたわけです。
それまでバラバラだった4つの物語が、『戦場の魔法少女』が中心を貫くことによって、1本の流れにまとまったんですね。我ながら、よくまあこんなうまい考えを執筆直前に思いついたなと(笑)。
作家はどんな風にプロットを練るのか、話を少しでも面白くするためにどんな工夫をするのか──そのモデルケースとして参考になれば幸いです。