少女の目覚め、そして対話

 俺が転生をしてから三日がたった。

 俺が見つけたあの子はジャンヌ・ダルクと言うらしい、初めて聞いたときは耳を疑った、だってあのオルレアンの乙女だぞ。

 神様の言っていた助けて欲しい英雄たちという中に、おそらくジャンヌも入っているのだろう。

 それにしてもあの時は大変だった、あの時は確か……



「あなた、誰?」

「いや、君こそ一体誰なんだ、急に血が付いた状態で倒れたから心配したんだぞ」


 これは本当だ、目の前で血が付いた女の子が倒れたら心配するのは普通だろう。


「心配?ふっ、笑わせてくれるわね、貴方たちがそんなことするわけないじゃない、でも助けてくれたのは礼を言うわ、だから」


 ピッと、俺の顔の前に黒塗りの剣を突き出し、こう言った。


「去りなさい、今ならまだ、殺さないであげるわ」

「……嫌だね」


 だが俺は逃げなかった、もしかしたら俺の中に、逃げるという選択肢はなかったのかもしれない。


「あら、命が惜しくないのかしら?それとも」


 ------ただの死にたがり屋かしら?


「ま、魔女撲滅を目的とする協会としたら、許せないんでしょうけど、このジャンヌ・ダルクが」


 ちょっと待て、今ジャンヌ・ダルクって言ったか?でも魔女疑惑がかけられたジャンヌ・ダルクが脱走したという歴史は残っていない筈だ。だが神様は少し異なると言っていた、つまり彼女は脱走に成功した場合の姿ってことか?だったら


「君は協会、またはフランス国家から追われているのか?」

「当たり前じゃない、奴らは今も脱走した私を処刑しようと必死、貴方もそうなんでしょ?」


 やっぱり、つまり今の彼女の状況は四面楚歌状態か、味方もいない、一人で逃げ続けてるのか?そんなの、そんなの……


「絶対に間違ってる、国からも、信じていたものからも裏切られるなんて、絶対に間違ってる。

 もうなにも信じられないかもしれないけど、一回だけでもいい、俺のこと、信じてくれないか、俺は絶対に裏切らない‼」


 彼女はポカンとした顔を浮かべたが、すぐに大声で笑い出した。


「フフ、アハハハハハ」

「何がおかしい」

「フフ、剣を突き付けられてそんな事を言えるなんて、おかしくって、だけど、まあ」


 すっと彼女は剣を下ろし、こういった。


「いいでしょう、一回だけ貴方を信じてあげる。

 だけど、貴方が一度でも協会か国家と通じていると私が思った時、その時は……」


 スッと、右手の親指で首を切る動作をした。


「解った、だけど知ってくれ、世の中そんな不幸ばかりじゃないと」

「笑わせないで、私が今まで味わってきたのは、神の試練とか美化された地獄よ、あんなもの、幸せとは正反対、不幸の塊よ」


 ああ神様、どうやら貴方、相当嫌われているようですよ。


 これが、俺がジャンヌとあった話だ。



「早くしなさい、置いてくわよ?」

「悪い悪い、すぐ行く」


 意外と俺らの仲も、最初に比べれば近づいたかもしれない。


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悲しき英雄に救済を @pointrezer

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