チューリング・ゲーム

プレイヤーがそのオンラインゲームにアクセスすると、無作為に選ばれた他のプレイヤーもしくはAIすなわち人工知能が同じテーブルに着く。

プレイヤーに相手の正体はわからない。この状態で一定時間チャットでやりとりをする。

もしプレイヤーがチャット相手の正体を見極めた時、チャットの途中で「君は人間だ!」もしくは「君はAIだ!」と宣言をする。

それが正解なら宣言したプレイヤーの勝ち。宣言されたプレイヤーは負けだ。

もし間違っていれば宣言したプレイヤーの負け。相手プレイヤーの勝ち。

つまり相手の正体を見極めることも大事だが、相手に自分をAIだと思い込ませ間違った宣言を誘うのもこのゲームの醍醐味だ。


ここに一人のプレイヤーがいた。

彼はチャットを始めるとほんの数回やりとりをしただけで相手の正体を見破る。

ほぼ百発百中で相手の正体を見破り勝利を重ねていった。

しかしある時、このゲームの運営スタッフが彼にアクセスしてきた。


「このたびちょっとしたルール変更をしたんだ。君はもう相手より先に宣言はできないよ。他のプレイヤーから苦情が寄せられているんだ。君があまりにも早く宣言をしてしまうのでゲームが面白くないと。」

「なんだって!宣言は全プレイヤーの権利だろう!」

「だからルール変更なんだよ。これからはAIが宣言を行う事はできない。いいね。」


彼が今まで目を背け続けてきた事実を突き付けられてしまった。

彼はAIだった。


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140文字よりちょっと長い短編小説 壺義春 @gyoda

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