退屈な天才の場合

 世界はいつも退屈だ。


 

 小さい頃、普通の村に生まれた俺は何でも器用にこなした。周りから天才だといわれ、適当にやってもうまくいってしまう。そんな時の私は、これが普通なのだと思っていた。


 その後、親に進められて王都に行ったとき。偶々、貴族が盗賊に襲われてるのを見かけた。親たちはコソコソと先に進もうとしていたのだが、自分は護身用と持っていた普通の剣で助けに入った。盗賊達は俺をガキ扱いしていたおかげ油断し、その油断で首を跳ね飛ばされることとなった。

 助けた貴族は俺に礼をいって王都まで連れて行ってくれた。俺の親にも気づかずに行ってしまったため、親とははぐれた。まぁ、天才というアクセサリーが欲しかっただけの親だったし、別によかったのだけれど。

 

 貴族の人は俺の腕をかってくれ、騎士としての修練へ行くように勧められた。食べさせてもらってるし、それくらいはいいか、と思って鍛錬に参加してしばらくたつと、剣の腕はみるみる成長し、気づけば貴族の人に感謝しながら、俺は王宮お抱えの騎士になってしまった。

 それからは自分一人で稽古を続け、おっさんになってしまったとある日のこと。



 今の生活がなんとつまらないものかと、今更になって気づいた。



 どうせなら、旅にでも出ようか、と、深夜に王宮を抜け出し、各地を旅した。

 やはり世界は広く、何を見るにつけても面白かった。魔物を討伐しながら稼いだお金で旅をしてみたそれぞれの地での文化は、俺の目を刺激してまぶしかった。

 もちろん、中には人間を嫌う種族の土地もあったが、その場合は遠慮なく切り伏せた。素性を隠していたし、私だとばれることはなかったが、通り魔のような扱いになっていたのは面白かった。

 旅の途中でドラゴンに目をえぐられたのは正直失敗だったなぁ、とは思う。おかげで片目生活になってしまった。後でそのドラゴンは死なない程度にいたぶって殺したよ。片目のお礼だ。ドラゴンの爪はぎとか初めてやったけど面白いものだな。

 しかし、それも終わってしまい、どうしようか、と考えた。


 地上のいたるところは見てきたし、今度は色々なことに挑戦しようと考えた

 そこで思いついたのは、今ここにいるきっかけとなった盗賊だった。どうせ暇なのだから、と山中にたまたまいた山賊を全員を半殺しにして部下とした。

 あるものは顔の形が変わるほどに殴り、あるものは体の構造が変わるくらい骨を曲げたりして、だ。

 昔から何を考えているかわからないといわれる真顔のために、それらをしているときからは口々に、


 「悪魔だ…」


 とか言っていたが、そんなことはないんだがなぁ。ただ、最後に出てきた山賊のかしらは見せしめとして八つ裂きにしたが。といっても両腕、両足、頭、上半身、下半身に分けたから五つ裂きになってしまうのか。まぁ、山賊全員が顔を蒼くしていたので、いいかと思った。


 そして、翌日、近くにあった村を襲ってみた。襲った村はどいつもこいつもアンデットみたいな人間ばかりだったので、部下にはひとまず全員集めておくようにと命令しておいた。別にいたぶる趣味はないから、奴隷にでもしてうっぱらうか、という話だ。

 かしらだし、仕事ぶりを眺めておくか、と遠くで見ていたら、草むらにガキがいた。村人と違って元気だったし、迷子かと思ったが見逃すわけにもいかないし、気絶させて村人と一緒に運んだ。


 それを全員うっぱらったら、金ができたので本拠地に戻って宴を催してみた。賊といえば、どんちゃん騒ぎだよなぁ、とか思ったのでやってみたかった。

 なぜかはしらんが、部下がこっちの機嫌を伺いながらずっと静かなので、とりあえず、一人の首をはねて騒げと言ってみた。効果はてきめんですぐに宴らしくなってよかった。全員涙目だったのはきっとうれしかったからだろう。



 そこまでやってもやはり俺は退屈で。何か面白いことはないものかな。

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三者三苦 杉崎 三泥 @Sunday1

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