エピローグ 君が人を殺す理由

「えー、朝のホームルームの前にお話です。昨日、このクラスの仲間だった、秋田良悟君が『消去』されました」


「え、あいつ『消去』されたん?」

「まあなんかしそうな奴だったよな」

「ノリー、お前あいつと仲良かったよな? どうなん、しそうだった?」

「あー、やりそうだったわ。ていうか、あんまそういう事いうのやめろや。仲良かったとかさ」

「ひでぇなぁ、かわいそー秋田クン」

「おま、秋田の彼女『消去』したくせにどの口が言うのよ」

「ま、終わったことじゃん? 蒸し返すなって。前だけ向いて生きてこーぜ」

「無駄に良い事言うなや」

「間違いない」

「それよりさ、今日河原町行かね? ケーキ屋あんだけどよ、そこがうまいらしくて」

「ケーキて。お前小学生かよ。かわいー」

「るせぇなぁ、いくつになっても良いもんは良いんだよ」

「じゃ行くか、俺今日バイトオフだし」

「久しぶりにみんなで遊ぼーぜ」

「そだな、良樹とか呼んでカラオケ行くか」

「うわ、良樹はヤバいわ。あいつはマジでぶっとんでっから」

「良樹の馬鹿さは異常だよな」

「間違いない」

「じゃあ由美とかも呼ぶ?」

「あー、あいつ呼ぼうか」

「おい、自分の彼女呼ぶなや。前みたいに途中で消えるやろ」

「てかお前、こないだゴムなしでヤッたって聞いたけど、マジ?」

「別にヤろうとしてヤッた訳じゃねぇし」

「子供できたらどうすんの?」

「別にいいんじゃない? 俺ら若いし、誰かがなんとかしてくれるって。ほら、よく言うじゃん? なるようにしかならないって」

「諦めてんじゃん。俺さ、お前のその諦めの良さだけは尊敬するわ」

「マジリスペクト」

「間違いない」

「あー、俺も彼女ほしー。セックスしてー」

「おい、ここで言うなやー」


 笑ってる。みんな、みんな、笑ってる。笑って、嗤って、わらって、ワラワラと、みんな。


「………………あー、死にてぇ」

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一人しか殺せない 夜乃偽物 @Jinusi

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