青やみどりのイルミネーションに彩られた1月のこと-2
それから数分後、滑り込みセーフで青真はやってきた。
「あ、あけましておめでとう!」
軽く息を切らし鼻の頭を赤くしてそう言う青真に翠は思わず笑いが溢れ、笑わないでよと言いながら一緒に鳥居をくぐる。
人が閑散としている神社。手水舎で清め、お参りをし、御神籤を引く。初詣に行く、という目的の1つはようやく叶った。
「ねぇ、ひとまず初詣は終わったけれど…。話って何?」
「うん…。」
「だから、何よ?文化祭の時から変よね…。」
翠は言ってからしまったと思った。文化祭の時のことをまた思い出してしまった。
なかなか話を切り出せない青真と、1人勝手に気まずい思いをしている翠の間に、沈黙が流れる。2人は何も言わず、ただ神社から家への反対方向へ並んで歩いていた。
閑散とした通りを抜けて商店街へ出た。2人の沈黙は商店街の明るさに当てられて余計に際立っていた。商店街の真ん中あたりには、季節の催し物を知らせる案内が所狭しと並べられていた。その前を通り過ぎ、商店街の並びの終わりが見えた時だった。
「あのっ。」「あのっ。」
2人の声が揃った。
「そっちが先にいいよ。」「そっちが先にいいよ。」
2言目まで揃った。さすがとでも言えばいいのだろうか。2人とも考えていることまで似たようなものだった。2人とも焦っていた。どうしよう、がとめどなく頭の中を巡回していた。
そんな中、青真は葛藤していた。どうしよう。でも、きっと今しかチャンスはない…。そして、青真は心を決めて、その言葉を口にした。
「隣町で、イルミネーションやっているみたいだね。行ってみようよ。そこで、ちゃんと、話すから。」
「うん。」
翠は少しびっくりしていた。ちょうどイルミネーションの貼り紙が目に入って、そこに行こうと言おうとしていたから。それがなんだか嬉しかった。朱里や紫苑と同じ長さの付き合いなのに、こんなに会うのは青真だけ。心が温かくなる気がした。
翠とは対照的に青真は心臓をバクバクさせていた。今日は心臓を酷使しすぎている気がする。
2人は隣町まで、それぞれの気持ちを言葉にすることはなく、ただゆっくりと歩いて行った。
「わぁ…。」
イルミネーションの明るさは、2人の間の静かな空気を数十メートル手前からでも照らしてくれた。並ぶ木々に同一の装飾が施されただけのものだが、両側に一列に並ぶ木々はとても、とても綺麗だった。
「あ、そういえば…。」
心が少し軽くなった青真は、ふと思い出した。今日自分が何のためにこうしているのかを。思い出して少し固まってしまった。その青真を下から覗き込んだ翠の顔は笑っていた。もう、仕方ないなぁ、って感じの笑みだった。
ちぐはぐの行方 紫月 結乃 @lvlv_alce
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