ある悪の花について
金村亜久里/Charles Auson
(一)
ボードレールの詩を思い出そうとすると、
頭の中に白地に控えめな赤い模様の入った
中国趣味(シノワズリ)の陶磁器の花瓶とそこに生けられ
た淡い青色のような水色の四五枚の扁平か
つ扇状に広がった花弁を持った鈍い色の茎
の花のイメージが浮かぶ。真っ赤な花弁の
ものが今さっき増えた。きっとこれらが悪
の花である。
(あるいは悪の華と言いきってしまってもいいけれど、この漢字の差異にはあまり意味はないであろう――フランスは漢字文化圏ではないし、私はフランス語を読むことが出来ない(したがって原題の正確なニュアンスを掴むことが出来ない)。とりあえず今はイメージの中に存在する植物としての花について語っているのだから、華ではなくて花でもいいのではないだろうかと思う)
花弁の根元の部分は濃い藍色
極めて白の強い青色ほとんど白といってい
い色をした中央の蕊の先端には鮮やかに黄
色い花粉があり、そこから推測するにどう
やらこの花は、すなわち今注目しているこ
の青い花は雌花であるようだった。
赤い花の方にも鮮やかな色と鈍く暗い色と
をした花弁があり
上の大きな二枚は紅く
下の小さな二枚は鈍く
花は段々としおれていく。
花弁が傷み、水分が抜けて
色が抜け汚ならしくなっていき
音もなく花弁が萎れ落ちる――
萎れて落ちる
ある悪の花について 金村亜久里/Charles Auson @charlie_tm
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