主婦業と創作活動

神田未亜

第1話

一人暮らしをやめ、結婚してから、小説が書けなくなりました。

 それまで浮かんでいたアイデアも、筆の乗るスピードも、めっきりどこかへ行ってしまったのです。

 どうしてこんなことになってしまったのでしょう。

 その原因を、三つの観点から考えて見ます。


《1.理解者がいるという安心感ができた》

 結婚したからには当然、伴侶が存在することになります。

 伴侶は幸いにも家族愛にあふれた人で、私の全てを大きく受け止めてくれます。

 それのなにがいけないのかと思うでしょう。

 ですが、小説とは自分を表現する手段です。

 ただ単に書いていて楽しい! それも一つの立派な理由です。けれど、書くからにはやはり、自分の書いたものを誰かに読んでほしい、そして共感したり楽しんだりしてほしい、というアウトプットの欲望がそこにはあるのではないでしょうか。

 自分の書いた小説にリアクションがほしい。それは一種の飢えです。

 自分の中にくすぶるアイデアを形にするには、その飢えこそが、渇望こそが、この上ない原動力になるのではないでしょうか。

 他者とのつながりに飢えてこその創作。

 そんな中、家庭というぬるま湯に浸った私は、他者と繋がりたいという欲求を家族という形で満たすことができるようになったのです。

 それは、私を飢えから、それゆえの創作から遠ざけました。


《2.妻であるという自分を抜け出せない》

 結婚以来、妻という立場が頭から離れなくなりました。

 要するに、完全に自分ひとりだけの時間と言うのが持てなくなったのです。

 たとえ部屋には自分ひとりでも、頭には伴侶の存在があるのです。住居全体は二人の共用なのですから。

 以前のように、どっぷりと妄想に入り込むことができません。小説の世界に飛び立つことが、難しくなりました。

 自分と言うものを一人に切り離せなくなったのです。

 不器用なことです。


《3.家事という存在》

 要領の良い皆さんであれば、家事を終わらせてから小説を書けばいいだろうとお思いでしょう。

 ですが、一年365日いつでも、家事と言う存在はつきまとう。

 小説を書いていても、ちらちらと頭の片隅には家事のことがちらつくのです。

 小説なんて書いている場合か。もっと家庭のことをしなければ。

 そんな思いが、罪悪感ともなって私を責めるのです。


 ――と、ここまで書いてきて、気付きました。

 これは単なる甘えです。

 ここまで原因が分かっているのなら、あとは自分次第で考え方を変えることができるはず。

 専業主婦となれば、会社員だった今までよりも格段に、執筆にさける時間は増えるのです。それこそ、一日の大半をついやせるほどに。

 それで物が書けないと言うなら、それは私の実力というものでしょう。


 結婚のせいにするなんて卑怯な泣き言を言わずに、より一層、真摯に物書きに向き合っていこう。

 このエッセイを書いて、改めてそう思いました。(エッセイとも言えない、雑文ですが)

 当初の論点とは変わりましたが、愚痴をここに吐き出して。

 心機一転、これからも創作活動に励みたいと思います。

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主婦業と創作活動 神田未亜 @k-mia

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