剣鬼の予感
登校する時掛の気持ちは沈んでいると言わざるを得ない。
神崎慎吾と神崎慎……
奴らを倒さないことには何も始まらないのだ。
こんなときに部活などやっていられない。
勝つ。その気持ちしかなかった。
竹刀をもつ時掛の目の前には高田がいる。
異様な殺気だ。
先程雑魚の一年坊主を倒したが、それとは全く別……
競技というより人を殺すための、そう、殺人剣を感じるのだ。
「どうらっ!」
高田が動く。
平青眼から繰り出される突き……
ひどく鋭い動きだ。
時掛はそれを剣尖を払ってよけ、竹刀を高田の胴に当てた。
「ドウッ!」
叫んだ途端、頬に猛烈な痛みが走った。
「ガッ!」
目の前には鬼のような顔をした高田がいる。
目は赤く光り、腕には気持ち悪いほどの筋肉がある。
高田が声を出さずに口を動かす。
コ ロ ス
刹那、竹刀が眼前に落ちて来る。
咄嗟によけ、竹刀を持った右手を後ろにさげた。
「一角!」
捻り突きである。
それは高田の胴を捉えたかと思ったが、空を切ってしまった。
次は腹に痛みが走る。
捻り突きを真似された。
「ぐっ、」
そして、喉を突かれる………
「ドウッ!」
「いててて」
目の前にいるのは高田。
尻餅をついている。
目は赤くないし、腕の筋肉もない。
「お前、なんで尻餅なんて……」
「は?お前が俺の剣尖払って胴入れたんだろ?完敗だよ」
違う。あの後お前が物凄い剣気を発して、俺を倒したんだ……
そうか。奴の剣気は俺に幻覚を見させたんだ。
あれほどの剣気、廬山からも感じたことがない。
奴といれば、強くなれるかもしれない!
そう思う時掛の気持ちが、高田の運命を狂わせてしまった。
「高田………」
「なに?」
「剣道部……入るよ、俺」
「え?まじ?うっしゃぁぁぁ」
高田は拳を突き上げ、吠えた。
獣の如く。
「だから、つよくなろう。」
「おう!」
高田は自分に潜む獣に気づいていない。
剣鬼が、生まれようとしていた。
刺客街路〜剣豪異世界接続〜 杣 @somawhere
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