白い闇

@m_crux

第1話 今日も朝が来てしまった

 光の朝は一本の煙草から始まる。

 その煙はまるで自分の人生を映しているかのようで、儚く消えてしまうようだと、毎朝同じことを光は考えてしまう。

 仕事が出来るわけでもなく、生きる意味も見つからない。それでも毎日制限ぎりぎりの薬を飲み続け、ひたすらに自分の病気と闘い続ける。

 いったい何の為に病気と闘い続けるのか?親を悲しませないため?自殺は世間体が悪いから?それとも、何より大切にしてきた弟の経歴に傷をつけるからだろうか?10年という期間を闘病に費やしても、いまだに答えは見つからない。

 煙草を一口吸って思い切り肺まで煙を満たす。そして煙を吐き出しながら、今日の事を考える。予定はない。外出すすることもままならない。

「何のために生きているんだか。」

 朝が来なければいいと思う。新たな一日が始まってしまうから。そこに価値が見いだせないから。

 自分はまるで真綿で覆われているような、白い闇をただひたすらに歩いている。

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