理解しがたい人々

雨昇千晴

理解しがたい人々

三度枯れ葉が目についたら、恋を終えると決めている。

『さよなら、二度と会いませんように』

テキストだけでぱたりと閉じる。反応はなかった。同意すらもう面倒らしい。

ガラケーなんて時代遅れだ、と言われたときから、すでに溝はできていた。醒めてしまえば、ろくな人間なんていない。自分も含めて。

――人に興味のない奴が、恋なんてちゃんちゃらおかしいや。

遠い昔、何某かにそう言われたことがある。妙に古い言葉ばかり使う、少しばかり変わった男。

――他人なんて、ちっと毛色の違う珍生物だとでも思ってるんだろ。そんな目だ。

あの日も相当酔っていた。赤い顔と白熱灯の光、誰某かがトイレに駆け込む音。ビールの色がやけに鮮やかで、泡がふつふつと昇っていた。

――それが何か悪いのか。

返したかどうかは覚えがない。ただ、昔から不思議だった。

美しいもの、変わったもの、魅力的なものに満ち満ちた世界で、他人というのはこちらを向けと、やたらうるさくかしましい。だからどうにか視線を向けてやっているのに、眺める以外の何を求めると言うのだろう。

他人たちは勝手におごり、勝手に開き、勝手に泣いて、たまに殴る。そんな彼らのふるまいが、私には全てばらばらで、ただ珍妙だという感想以外、何の意図も持たなかった。

――お前は人を愛せないよ。

そう言われたので、そうなのだと思う。

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理解しがたい人々 雨昇千晴 @chihare

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