後編

 無尽蔵に増え続けるナースの大群で埋め尽くされた『病院』を脱走してから、どれくらいの時間が経ったでしょうか。

  何も考えないままバイクを運転し続けたKは、やけに見慣れた場所にいる事に気がつきました。辺りが濃い霧に包まれたような状態になっており、人影一つ見えないという不気味な様相ですが、それよりも、彼は長く続いた緊張がようやく、本当にようやく解く事が出来た喜びや疲れの感情の方が大きいものでした。いつの間にか、住居であるアパートの目の前に彼は辿りついていたのです。

 脱走するために盗んできたバイクを、彼はぶっきらぼうにアパートの敷地の目の前に乗り捨ててしまいました。いちいち細かい事なんて気にしていられるかという心を表すような行為です。そのまま彼は疲れた足取りで自分の部屋へと階段を上がり始めました。今日は生まれてきてから一番の疲れを味わったから、このまま大人しくぐっすりと寝ていよう。そう考えながら、Kはようやく懐かしい我が家に入るドアの目の前へと到着しました。老朽化で建てつけの悪い鍵を開け、住み慣れた懐かしい我が家に足を踏み入れてた彼は――。


「ただい……」


 

――そこに広がる光景に、言葉を失いました。


 ドアの向こうに広がっていたのは見慣れた汚い自分の部屋では無く、ずっと彼が堕落し続けていた一台の病院のベッドと、それを中心に天高くそびえ立つ巨大な吹き抜け、そして何千何万階もの床を埋め尽くし、彼に向けて笑顔を向ける、何万人ものナースでした。


「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」「おかえりなさい♪」


「……ははは……はは……」


 そして、現実から逃げるかのように後ろを目をそらした彼の視界を覆ったのは、このアパート以外の全ての場所を、地平線の遥か向こうまで覆い尽す存在―—短い髪に大きな胸、ピンク色の制服に帽子、美しい太ももや胸、そして優しい笑顔を持つ、『病院』で一番の美人ナースだったのです。


「もう大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」大丈夫ですよ♪」


 何万何億何兆何京、無数の声に包まれながら彼はそのまま気を失ってしまいました。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その後Kがどういう状況になっているのか、正確な内容は誰にも分かりません。

 ただ、一つだけKはこれから『病院』の中でずっと入院し続けるだろう、と言う事は確かでしょう。

 彼の世話をするために、笑顔を振りまきながら現れ続ける美人ナースの無数の笑顔と共に。


「さあ、今日も私が治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」治してあげますよ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」…

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無限ナースの逆襲 腹筋崩壊参謀 @CheeseCurriedRice

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