聖樹より降りたるもの
春野 一輝
第1話 光差す道
蛍のような光が、一つの光る塊に集まっていた。
一つの光が、その大きな光に当たり、一つ弾ける。
また一つ、一つ当たっては弾け、当たっては砕けていった。
そんな光の中心に、少女が浮かんでいた。
白い姿の少女は、裸体のまま、意志もないかのようだ。
ただ、眠るかのようにして、その光に包まれ立っている。
突如、影が差し、何か黒い物体が光の中に飛び込むのが見えた。
それは混ざりあい、溶け込むかのようにしてその影は少女の中に飛び込んだのだ。
そしてふと、彼女の瞳が開き、白い光の中。黒い球が二つ外を眺めているのが分かる。
まだ生まれもしない世界を見つめて。
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一つの種から生まれた世界。情報は樹と樹で更新され、種より生まれた種族にその情報を与える。何とも言いようもない、聖樹(マザー)によって管理された世界。
区画B-11に住む私、マリガンは一つのレーザーガンの手入れをしながら、神経から連なる信号から、今日の朝のデータを受け取っていた。
目の前にある黄色い樹脂からとれたスープは、赤い泡をたてながら静かに気泡とともに沈んでいくのを眺めると、黒い自分の影と息によって揺らぐのが見えた。
一気にグイッと口の中に含むと、こぼれた液を逃さぬように、なめるようにして口物をぬぐった。
朝はこんなものだ。と、私は思う。
軽いストレッチに、レーザーガンの整備、代り映えしない射撃の練習。
体内の電子が7時を告げる。
そして目の前のボードに表示された、STARTの文字。
赤く表示され次第に大きくなる点たちの群れ。
パン、パン、パン。
と軽い音を立てながら、一つ一つに命中させていく。
EXCELLENTの表示の後、
静かに今日の練習が終わった。
この私、区画Bー11に住むマリガンは、あるわけもない敵の襲撃を想定されて、遺伝子の適応力で選抜された中の一人だ。
マリガンは愛称でしかなく、実際は番号がある。だが、番号で呼ばれることはめったにない。珍しく名前の与えられた存在の一人だ。
名前があるのは珍しく自我というものを発達させた存在だかららしい。
旧人類に近い世界を作るのを目的とした、聖樹(マザー)らしい考えだとは思う。人間に近い存在は大事にされる。それが、中でも、外でも。似ていれば何でもだ。
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聖樹より降りたるもの 春野 一輝 @harukazu
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