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村上春樹の『海辺のカフカ』上下巻を間違えて読んだ話

三冊の本を買った。
一冊は有栖川有栖などの作家が書いたミステリーの短編集。
残り二冊は村上春樹の『海辺のカフカ』上下巻だ。
一冊だけ家で読んで、あと二冊を行きが40分あるバスの中で読む事にした。

出発する前に読んだ本は、短編集だと思っていた。
内容は、まだ人生が見えてない15歳の少年が、父親の金をくすねてでもやりくりしようともがく冒頭だった。
私は親の金を窃盗するミステリーの始まりを見て「見たことないなぁ」と思いつつ、深刻な状況にある少年に共感を示していた。

私は無造作に二冊の本を取って、カフカ上下巻だと思ってバスに乗った。初めて読むカフカに期待しながら、上巻を取って読んだ。
その内容は、男達の二人の旅が冒頭だった。そこに出てくる男は、尾崎豊の歌に出てくる「バイクを盗んで走り出す」少年が、そのままおじさんになったような人だった。

有名な「やれやれ」を言うおじさんで、そのフレーズがセリフに出てくるたびに、心が弾んでしまった。

ついつい読み進め、冒頭の一節をまるまる読んでしまった。ページをめくると、25節という文字が次の冒頭に出てきて、やっと自分が間違えて下巻を読んでいることに気付いた。
しまった! と思って、上巻だと思っていた方を読むと、痴漢の被害を訴える恋人のセリフで「ほぁ?」となった。短編集だった。
3つともそれぞれタイトルを間違えて、冒頭を読んでいたことに2度も驚いてしまった。

つまり、同じ色のブックカバーを三冊に全部つけてたせいで、読む順序を間違えたらしい。カフカ上巻を短編集の冒頭と勘違いし、下巻を上巻だと思って読んでしまった。

さて、上巻は父の金をくすねてもがく少年の話で、下巻は尾崎豊の歌詞なおじさんが二人旅をする話だ。私はこの話がどうつながるのか? と、ワクワクしている自分に気付いた。

しかし、行きのバスにはカフカ下巻と短編集しかない。短編だと思っていた上巻は家に置いて来てしまった!
私は二冊の本を見た。同じ色のブックカバーだった。
勘違いで先を読んでしまったのに、すでにカフカが面白いと感じてしまった。

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