グレイッシュブルーの青春小説

 主人公は高校三年生。大学受験を控え、成績は志望校に行くのに充分なもの。塾の同級生は志望校がC判定でうめいたりしているけれど、彼の成績は問題ない。

 別にいじめられてもいない。期待していたロマンスはないけれど、自分によく話しかけてくれる友人も結構いる。ハイテンションなマロ、気に入っているAV女優をやたら薦めてくる月島君、主人公をからかう猫山田さんなど。

 なのにどうしてか、この作品は鮮やかなブルーではなくグレイッシュブルーだ。流されるまま大学に進学しようとしていること、いつまでも学校に来ないクラスメイト、いつもある、劣等感と友人たちへの憧れ。それらがこの作品をリアルでくすんだ色にしている。

 決して明るくはない。けれどあがく人の鮮烈さがそこにある。

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