エピローグ

あの忌まわしい戦いから半年が経った。


おれは生かされた。


<フクロウ>だけでなく、命を散らした<金のキツネ>たちの返還の儀を一族の長として執り行った。

そして、おれは総長になり、<黒いワシ>から<金のワシ>に呼び名が替わったが、その責は重く、さらに一族の頼れる者は還ってしまい、守るべき者ばかりになった。

あの戦いの最後、<アナグマ>は村と村人を呪い、大勢の村人が亡くなったが、皮肉にも生き残った村人たちとの関係は改善された。

双方生き残ったのは女子供たち、争いに関わらなかった体の弱い者たち、けがを負って動けない男達であったし、村は疫病が流行り、大地が枯れてしまったので、おれたちは彼らに助力した。

亡くなった者たちの埋葬を手伝い、建物の修繕に手を貸し、作物を分け与え、病人には薬草を処方し、代わりに彼らからの不可侵と対等の地位を受け取り、尊厳を取り戻した。

まだ心の奥底には根深い確執はあるが、お互い生きるのに精いっぱいだったので、表層上は打ち解け、子供たちに至っては、一族と村の子たちが仲良く一緒に遊んでいるのを目にする。


<アナグマ>の祖父は、争いから1か月後に息を引き取った。

最後まで孫を、<アナグマ>を案じ、くれぐれもよろしく、と言い遺していった。


<アナグマ>は目を覚まさない。

鼓動も遅く、息もほとんどしていない。

戦いの終焉から数日後、夢でタイオワを名乗るサンフェイスカチナに会った。

曰く「未熟でたくさんの命を奪った彼への罰として、その生を以って他の尊い命を救ってもらうことにする。必要な時に目覚めるだろう。」とのことだった。

おれが生きている間に、目を覚ましてくれるだろうか。

<黒いワシ>と慕ってくれた大事な弟だ。一緒に幸せになりたい。償いだって一緒にやってやる。

もし、おれが死んだ後に目覚めるなら――、幸せを祈っている。


<アナグマ>がもたらしてくれた和平を少しでも永く維持できるようにするよ、おれ。



アナグマ <終わり>

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アナグマ -戦いと精霊- まざーぐーす @Tagi

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