32歳(童貞)ここに現る!

「おっす! 遅かったじゃねーか。相当てこずったんか?」

「ええ、とっても聞き分けの悪い方でしたわ」

「やっほー、どーてーの魔法使いさん♪」

「こ、こんにちは。吹雪 翼です。って、童貞!? 本気で魔法を使えたりするんですか?」

「そうさ、俺は三十二歳童貞、澤田 勇人。現役で魔法使いをやっているんだぜ。よろしくな。新人さんよ」

 どこぞのネットの世界の話じゃないのか? ていうか何サラリとそんなことを言っているんだ。少しは気にしろよ。

 ここは俺が永久就職(希望)するであろう会社だ。

 と思ったら、単なる大きい山奥の一軒家で「あうでぃっと」と可愛らしく書かれた部屋に通された。多分あの幼女が書いたのだろう。

 アリスたち姉妹は二人掛けのソファーに腰かけ、俺と勇人さんは

 ん? ちょっと待て、この違和感は__

「お前高校生じゃねえのか? 学ランきてんだろう! なにガキのテンションを真に受けているんだよ俺」

「おいおい、それはないだろうよ。俺達の仕事は、高校の監査及び地球平和を守るためにこうやって高校生の姿をしてわざわざやっているんだろう? この百合姉妹、さてはちゃんとしてないのか?」

「いやそれはおねえちゃんが……」

「アリスが悪いのよ……」

 二人共うつむいてぼそぼそと言った。さっきの太刀や銃で襲ってきた気迫すら感じられなかった。

「よ~し! じゃあ俺が説明してやる」

 自称三十二歳学ラン(童貞)が胸を張りながら俺に向かってきた。

「俺たちは某ネットサイトでされる予言が本当の事だと判明して、それを未然に防ぐために立ち上がったんだ。

 しかしながらその原因の発生の元が有明高校の真上の宇宙空間でもろに影響を受けている有明高校を守るためにもこの姿になっているということなんだ。

 しかも時々宇宙人が学校を徘徊していたり、隕石が落ちてきそうだったりで大変でとにかく人で不足なんだ。そこで、就活浪人しそうだった君に採用通知を送ってみたというわけさ」

「わけさじゃねーぞ。いや理由がおかしいだろう。平和とかを守るのにそんなに人選がアバウトでいいのかよ?」

「え? ちゃんとしたではないか? アリスを襲うか、襲わないかで。あ、襲ったら内定取り消しで警察に通報するつもりだったから」

「それだけでいいんですか? 襲うかだなんて…するわけないですよ!」

「え、ゆーとさんは男の子だったこと知っていたんですか? あ、そういえばお姉ちゃんも!」

「知ってたぜ! じゃなきゃ採用できないじゃないか」

「ええ、わたくしもそう聞いていましたわよ?」

「う、裏切り者! この私を騙すなんてひどいのだぞ。どうして言ってくれなかったんだ。こんな童貞野郎なんか性欲の塊で犯されていたかもしれないんだぞ」

 うるうると目を潤わせて姉貴と勇人を見ているアリスはかわいい。こんな幼女に責め立てられたら理性がぶっ飛びそうになるぜ。本気で犯したい。

「そのためにわたくしが待機していたのよ? そう騒ぐんじゃないの」

 姉貴はアリスを抱き寄せてから軽くキスをした。なんだろうか。幼女と美少女の禁断の恋とか同人誌があったら絶対に買うな。うん。

「また始まったぜ。この百合姉妹。君ら三人まとめて同じ家に住んでもらうからまあ翼は理性が飛ばないように我慢しろよな。そういえば確認だけど、お前ってホモじゃないよな?」

「は? え、あのホモなんかじゃないです」

「そっかーノンケなんだね。まあそっちの世界に目覚めたら俺がいつでも相手してやるから安心しろよ」


!?


「もしかして、童貞なのってそっちの人間だからですか?」

「ああ、そうさ。アナルなら何回もぶち込んだぜ。締め付けがいい奴はそれはそれは最高に気持ちがよかった」

「お、俺の貞操の危機の方が心配な気がしてきたんですけど?」

「大丈夫だ。毎日こんなかわいこちゃん達と暮らしていたら、俺なんて汚らわしく感じてくるから。ほら、この会話を聞いている、姉妹さんはあんな目で見てますぜ」

 ずっと勇人さんの顔を見ていたけど、向かいの二人を見るとジト目で俺らを見ていた。頼む。俺だけは勘違いしないでくれ。

「お、俺はホモとかいかがわしいものなんか好きなんかじゃ……」

「え~じゃあ私が夜のお相手しましょうか?つ・ば・さちゃん♪」

「こんなクソみたいなキモ童貞わたくしは相手何かしませんわ。アリスもこんな奴に大事な処女を奪われないようにね」

「しょ、処女言うな!」

「ふふ、かわいい」

「可愛いゆーな! この痴女、ビッチ、ヤリm」

「そろそろやめた方が良くてよ?」

 ニコニコと微笑みながら頭をわしづかみにして顔を真直ぐに向かい合わせ合った。目を斜めに逸らせながらもアリスは何かを言おうとしたが、「ごめんなさい」と静かに謝った。


「ははっ、おもしれーだろここ。んじゃこれ飲んで」

「こ、これは?」

 渡されたのは一本のドリンク剤のようなもので何もラベルも張っていなくてとても怪しげだった。

「それを飲んだら高校生になれるんだ。俺たちにみたいに」

「え? そんな怪しいものこれって一体どうやって作ったんですか?」

「俺の魔法さ」

「なんかそれ怪しくね?」

「ほーう、この美人百合しまいにはホイホイついていったくせに俺にはそんな態度なんだ」

 にやにやと俺を見つめながら言う。実に憎たらしい。もうこうなったら……

「やってやろうじゃん。Audit」

 ニヤッと笑われながらも俺はドリンク剤を一気に飲み干した。



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異世界に行きたい願っていたら、現実世界のとんでもないところに連れて行かれそうです。 夕日 羅紗 @rasya_yuhi

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