第1章 襲撃 その1

 馬車が揺れる。

 私は揺れる振動に身を任せて天井に垂れ下がるカンテラを見つめた。

 カンテラが放つ光は馬車の中を明るく照らし出していた。

 そのガラス部分には私の姿がある。

 純白の髪に刺繍の入った白いローブを着込んだ姿はある人に言わせると雪の妖精ではないかと言われるほどだ。

 私にはそんなに大したことは無いと感じるのだけどね。

 私は自分の姿を見て随分と時間が経ったことを実感した。

 この旅を始めたのは十二のときからだ。

 それから五年。

 随分と私も大きくなったものね。

 そしてもうじき目的の場所に着く。

 予言者の信託から始まったこの長い旅も終わる。

 もし生きて帰ることができたら、また連中の傀儡として生きていくことになるのだろう。

 そのときの私は何を考えるのだろうか。

 今そのことを考えても仕方ないのだろうけど、せめて反撃を何か用意しておきたいな。私は昔とは違うのだものそのことを見せつけたい。

 私は忍び笑いを漏らすと隣に座っている四人いる護衛の一人目ベルクが声をかけてきた。ベルクは黒髪に深紅の瞳を持った青年。

 腰には軍刀を携えて右手には巨大な宝玉が付いた杖を握っている。


「どうしたフィリア。いつになく上機嫌に見えるが何かいいことがあったのか」

「ただの思い出し笑いよ。旅も終わると思ったらいろんなことを思い出しちゃってね」

「それはよかった。フィリアが楽しそうにしていると俺も嬉しい」

「気遣いどうもありがとうね」


 ベルクは私の返事で安堵したのか眠っているかのように静かになった。

 彼はこの旅の最初からお供として仕えてくれている。

 彼なしでは私はすでに死んでいただろう。


「フィリア嬢、この馬車に向かって何者かが来ているようじゃよ。 かなり殺気を放っておる。まともな連中ではないな」

 二人目の護衛ヨゼルフが外を見つめながら私に言葉を投げかけた。

 ヨゼルフは白髪と白髭でライオンの鬣のようになっている老紳士。

 脇には長さの違う三本の刀を携えていた。


「その方々はどれ程の規模でこちらに向かってきているの?」

「馬に乗ってこちらに街道を真っ直ぐ向かってくるのはおよそ百人程か。 馬車一台に向かわせる人数としては異常な数だが、それ以前に密林に隠れて向かってきているのが数万いるな。 しかもそいつらは人間ではない。 気配がまるで違う」

「交渉で乗り切ることはできそうですか」

「まあ無理じゃろうな。 襲撃を受ける前にこちらから攻勢に出た方が良いじゃろう」

「私としてはなるべく穏便にことを済ませたいから向こうの出方を見ましょう。 こちらから仕掛けて事態を余計にややこしくしてもいけないわ」


 私の言葉を聞いて三人目の護衛アグヌスが立ち上がった。

 アグヌスは馬車の天井につきそうな程の長身の男である。

 燃えるような赤髪にシルクハットを被り、オーバーコートを着込んでいる。

 服の袖には糸のような細い紐が何重にも巻き付いていた。


「ならば自分が森に潜むとしよう。 自分であればまず連中に気づかれることはない」


 アグヌスがその言葉を残すと馬車の中でも影が濃い荷物の裏側に足を運んで吸い込まれるように消えてしまった。

 馬車の一番奥で座り込んでいた四人目の護衛ミャマはアグヌスの行動を見てげんなりした表情を浮かべながら言葉を吐き出した。

 ミャマは栗色のけもの耳をした幼女の姿をしている。懐には儀礼剣を納めている。


「アグヌスは気が早いよ。僕が反対する前に出て行っちゃうなんて本当にむかつく」

 ミャマの言葉にベルクが応じる。

「あいつは仕方ない。そういう風にはできていないからな」

「だってだって、あいつ本当に自分勝手だよ。 まだ何をするかも決めてないのに単独行動ばっかりするし、もううんざり」

「そう言うな。 あいつの単独行動にはいつも意味がある。 信用してやれ」

 ミャマはうなり声にも近い声を出して怒りの感情を表していた。

「馬鹿共め。 アグヌスのことよりも目の前の相手のことを気にしたらどうじゃ」


 ヨゼルフはベルクとミャマのあきれ果てた表情を浮かべた。 私はこのギクシャクした状況に思わず話に割り込む。


「はいはい、ヨゼルフとベルクは馬で追ってくる連中の相手をしてね。 ミャマは私といましょう」

「嫌だよ。僕も外で戦いたいよ」

「それだと馬車の中で私一人になっちゃう。 私がさみしいから一緒にいてほしいな」

「そこまでフィリア様が言うなら仕方ないよね。 うん、僕は我慢するよ」


 ミャマは喉を鳴らしながら私の足に絡みついた。その可愛らしさに思わずミャマの頭を撫でてあげた。


「ベルクは業者に頼んで馬車を止めるのじゃ。その間にわしが連中の相手をしよう」

「了解しました。 師匠」

「その言葉は好きじゃないから使うなといつも言っておるじゃろうが。 この馬鹿弟子め」

「剣を習っているのだから、それぐらいは言わせてくださいよ」

「戦友として共に戦っている者に上下関係などいらんわ」

「その割には弟子と認定してるのよね。 別に呼び名なんて何でもいいでしょう」

「フィリア嬢、わしとベルクとの会話に割って入らないでくれ」

「雇用主としては護衛している側の人間関係が悪くなるのは見過ごせないからね。 これぐらいは言わせてもらわないとこっちも困るわ」

「安心せい。これもわしらの交流の一環じゃよ」

「そうなの?」

「そうだ。 それよりも追ってきている連中がいるのだろう。アグヌスも外に出てしばらく経っている。 こんな痴話喧嘩に花を咲かしている場合ではないでしょう」

「馬鹿弟子の癖に一丁前の台詞を吐くようになったものじゃな」

「これは手厳しい」

「ふん、まあいい。手筈通り行くぞ」

「はい」


 ベルクが業者に馬車を止めるように言い聞かせに向かったあと、ヨゼルフは馬車の後部の出口の布に手をかけたがふと私の方を振り向いた。


「フィリア嬢よ。 もし戦闘になったらいつも通り頼むぞ」

「ええ、分かっているわ」


 ヨゼルフはその言葉を残すと馬車が止まると同時に地面に足をつけて追ってくる連中を迎える。

 私は馬車の後部出入口の布で外に見えないように体を隠しながら外の様子を伺う。ミャマもそれに釣られて私と同じような格好で外を伺った。

 星の光や月の光すらない暗闇が辺りを包み込み、馬車から漏れる照明だけが周囲を映し出す。相当、夜目が利く人間でなければ外すら満足に歩けないだろう。

 馬車から漏れる光によって見える景色は薄らと伸びる先の見えない大通りの姿とそれを取り囲むように密林が壁のようにそびえ立っていた。

 ヨゼルフが鋭い眼光を向けた先から武装した兵士達が現れて馬車を取り囲む。


「この真夜中、こんな人気の無い場所で兵士の団体さんがなのようじゃ。言葉の返事次第ではタダでは済まさぬぞ」


 ヨゼルフの言葉に兵士達の間から割って現れた一際大きな全身甲冑の男は馬に乗ったまま言葉を返す。


「我はこの近辺を治める領主ガレリアの警護隊長のバッサムという者である。 この先に向かうことは我が国エスティアの法律で禁止されている。 無用な殺生は好まぬが故。お戻り頂きたい」

「それは聞けぬ話じゃな。 我々はすでに国王ファルスト三世殿下から許可を頂いている。今更、戻る理由がないな」

「それは実に残念だ」

 バッサムは馬に装備された槍を抜くと矛先をヨゼルフに向けた。

「ほう、おまえは国王の命令ではなく領主につくか。 たいした連中じゃな」

「我が領主の命は絶対だ。 我が言葉が聞けぬと言うならここで切り捨てるまでだ」

「どうやら、ここの領主は国王ではなく闇の者達の傘下に堕ちたようじゃな。 ならばわしも容赦する必要はない」


 ヨゼルフは脇から野太刀と小太刀を抜いてバッサムに構えた。


「では行くぞ」


 ヨゼルフはバッサムが放つ一撃を小太刀で受け流すと即座に野太刀で切り込む。 バッサムはそれを右肩の装甲で受け止める。


「ずいぶん重装甲じゃな」

「我が装甲は切ること叶うことなし」

「そうか。ならまず乗っている馬から仕留めるとするか」


 バッサムが振るった槍を再び小太刀で防ぐと馬の前足に野太刀を突き刺して、引くと同時に馬の筋肉を切断した。

 馬は体のバランスを保てなくなり、バッサムは崩れ落ちる前に飛び降りた。


「大抵、馬と一緒に崩れ落ちるのに意外と俊敏じゃな」

「この老体め。 私を地面につかせるとはもう許せんぞ」

「馬に乗っておるのに足を使わず戦うからそういうことになる。格上に戦うならそれぐらい常識とわきまえるのじゃな」

「なにが格上だ。 この糞じじいが」

「それぐらいの差も分からんとは困った奴じゃな」

「ふざけたことばかり言いやがって」


 バッサムは頭から湯気でも噴き出しそうなくらい顔を真っ赤にして大声を上げる。

 その姿にバッサムの部下達も圧倒されていた。


「おまえ達、何をやっている。 私がこのじじいを押さえているうちに馬車を制圧しろ。きちんと任務を果たせ」

「ベルク、この愚か者は私が相手をする。 他の雑魚共は任せるぞ」

「お任せあれ」


 ベルクは馬車から飛び出すと宝玉の付いた杖に力を込める。

 宝玉はまばゆい光を放って小屋ほどの巨大な刃となって収束する。


「師匠、ちゃんと避けてくださいね」

「馬鹿者め。 おまえごときの攻撃がわしに当たるわけが無かろう」

「そりゃそうだ」


 ベルクは巨大の刃がついた杖をなぎ払うように振り回すと巨大な刃は衝撃波となって辺り一面を吹き飛ばした。

 馬車周辺にいた兵士達は周囲の木々ごと上空へと吹き飛ばされて密林の奥地へと消えていった。


「やり過ぎたかな」

「いつものことじゃ慣れておる」


 ベルクの放った衝撃波を地面に伏せて避けたヨゼルフは何事もなかったように立ち上がり言葉を返した。


「師匠の回避術は本当にすごいですね」

「あの技はムラが多すぎる。振り切る直前と足下辺りは完全に死角になっておったぞ。そこに兵士が潜んでいたらどうする気だ」

「そんなのを読み切って動ける人物は師匠以外にいませんよ」

「そんな風に考えていると早死にするぞ」

「安心してください。 俺は絶対師匠より長生きしますから」


 ベルクは嬉しそうに笑顔を浮かべてそれを不満そうにヨゼルフは見つめた。


「これで済むと思うな」


 全身甲冑の重みで吹き飛ばされずにすんだのか。

 バッサムが立ち上がりヨゼルフ達を睨みつける。

 バッサムは槍を握りしめるとヨゼルフに向かって突進を仕掛けた。

 ヨゼルフは先と同じように槍を小太刀で受け止めると右肩に向けて刀を振りかざす。

 ヨゼルフの振りかざした刀は鎧をすり抜けて鎧の隙間の位置で静止した。

 その刀は脇差しだった。

 ヨゼルフは小太刀を離して柄に掌打を打ち込みバッサムの体に刃を突き立てた。


「なぜわしが刀を三本差しているか分からなかったお主の負けじゃ」


 そう言うと脇差しを抜いて鞘に収める。

 地面に落ちた小太刀を拾い、地面に突き立てておいた野太刀に持ち替える。

 バッサムは鎧の隙間から大量の血を吹き出して大地に倒れた。


「私の出番はなかったわね」


 私は思わず顔を出してヨゼルフに話しかけた。


「なにを言っておるのじゃ。 これからじゃよ」


 その言葉と同時に地面に倒れたはずのバッサムが起き上がりヨゼルフに襲いかかった。

 ヨゼルフは小太刀で兜を吹き飛ばすと野太刀でバッサムの首を刎ねた。

 バッサムは再び地面に倒れたが今度は首の無い状態で起き上がろうする。

 そこにヨゼルフがバッサムの持っていた槍で胴を貫いて大地に張りつけた。


「どうやら向こうには死霊術師がいるようじゃな」

「それだけだと思うのか人の子よ。 人の言葉なら説得できるかと思ったが、どうやら無理だったようだな。 今度は我々が相手をしようじゃないか」


 ヨゼルフの言葉に空から声が聞こえた。私はミャマと一緒に馬車から降りて上空を見上げた。


「フィリア嬢、外に出るんじゃない。 どこから狙われるか分からんのじゃぞ」

「駄目よ。 こいつとはしっかり話をつけないといけないわ。 こいつがたぶんこの旅の全ての元凶だと思うから」

「それは違う。 元凶があるとしたら予言者のほうだ。 予言者がこの世界のルールをねじ曲げようとしている。 それを我々が邪魔をしているに過ぎない」

「どうして私達を予言者の元に向かわせないようにしているの」

「この世界はもうじき滅びる。 それを予言者が止めようとしている。 それは我々にとっては迷惑だ。 世界が滅びて再生の時が訪れたとき、今度こそ我々が実権を握る。 闇の者として地を這ってい生きるのはもう懲り懲りだ」

「あなたたちは闇の者達なの」

「そうだ。 かつて七度目の滅びを迎える前に栄えた種族。 そして八度目の再生を迎えた際に全てを奪われた。 それが我々だ」

 上空に黒い塊が浮かび上がり、それが形を作り出す。

 その姿は骸の王。

 かつて人の形をしていたのであろうがすでにその面影はなく全て骨と皮でできている。

 そしてその骨さえも闇に染まり、瞳は奥底には何もなく吸い込まれそうなほどの絶望が漂う。

 頭部には王冠が飾られているがその醜悪さは身の毛の弥立つほどおぞましい。


「闇の王アンラマンユの名において問おう。 予言者を裏切りこの場を去るか。 それとも我々と戦うか選べ」


 私はその姿を見て全身から力が抜けて恐怖の余り涙で視界がぼやけてくる。 もう立つだけで全ての気力を使い果たしてしまう。

 だけど、心はすでに決まっている。


「闇の王アンラマンユよ。汝の問いに答えよう。 私、フィリア=フィリップスはこの世界の滅びを防ぐため予言者の元に向かう。 そして世界の救済をここに誓う」

「それが答えか。 いいだろう。 その答え確かに聞き届いたぞ」


 アンラマンユのその言葉の後に急激な寒気を感じた。 そして寒気が私に・・・・・・いや、おそらくここにいる全員にこう答えた。
















 ・・・・・・滅びよと。















それが始まりだった。

 森の影は形を取り戻し本来あるべき姿へと変貌する。

 あるものは七つの首を持つ竜にとなり、あるものは一つ目の巨人となった。

 あるものは火を噴く鳥となり、あるものは子鬼なり、あるものは大蛇となった。 

 呪いの言葉が森の奥から次々とあふれ出し、悪霊達は狂ったように踊り出す。

 暗闇の中から木々達が謳う。

 死なせてくれと合唱する。

 それを聞いて悪魔達はせせら笑う。

 地面は沼に変わり世界は徐々に溶けていく。

 そこにあるのは魔界だった。

 私はそのときにアンラマンユと話したことを後悔した。

 もう戻ることができない地獄に私達は突き落とされたのだと、そのとき初めて思い知ったのだ。


 帰りたいよ。

 お母さん。

 帰りたいよ。

 お父さん。

 なんで私はここにいるのかな。

 私はここにいたくないよ。

 死にたくないよ。

 もう嫌。だれか助けて。


 あまりのことにただ泣き崩れるしかなかった。

 もう立つ気力すらない。

 そのとき、僅かに私の耳に声が聞こえた。


 この声は知っている。

 誰だろう。

 もしかして私をその人がここから連れ出してくれるのだろうか。


 僅かな希望に私は思わず振り向いた。

 だけどそこには誰もいない。

 そして再び声が聞こえる。


「しっかりしろ運命の子よ。 この声が聞こえるか」

「もしかしてアグヌスなの」

「そうだ。 自分はいつもすぐ近くにいる。 それよりも周囲を見ろ」


 私は周囲を見渡してみる。

 世界は呪いに覆われ生きとし生けるものの生気すら失われている。

 木々も腐食してボロボロになって崩れ去る。


「壊れていく。 何もかもが壊れていく。 これを見せてどうしろって言うの」

「違う。 それじゃない。 もっと周りを見るんだ」


 私はそれを聞いて初めて気がついた。 ミャマが私の周囲に結界を張っていることに。


「フィリア様、僕がアンラマンユの恐慌を防いでいるうちに早く準備に入ってよ」

「ミャマ、いつからこの結界を張っていたの」

「ついさっきだよ。 僕にもアグヌスが言葉をかけてくれたんだよ。 あのアグヌスがだよ。 フィリア様を守れるのは君だけだから力を振るえって」


 アグヌスはいつも私を後ろで支えてくれている。

 ならば私の全力をもって答えないといけない。

 遠くでヨゼルフとベルクが巨人と竜相手に苦戦している。

 いつもと違って動きに切れがない。

 おそらくアンラマンユの恐怖によって力を削がれているからだろう。

 私は周囲の空気を吸い込み、一気にはき出した。


 私は生きている。

 私は心臓は脈打っている。

 まだ大丈夫だ。

 まだ戦える。


「ミャマ、この沼地になった大地を少しだけ元に戻せるかな。 それで全ての準備は整うはずだから」

「了解だよ」


 ミャマが大地に儀礼剣を突き立てると沼地は本来の街道に姿を取り戻した。


「ミャマ、お手柄よ。 これで存分に力を震える」


 私は大地に小さな魔方陣を描く。その中から光の妖精が飛び出して私の周りを飛び回る。


「いつもあなたには助けられてるわね。 今日もいつも通りお願いね」

「あいさっさ」


 私は妖精と意識を通わせて次々と魔方陣を描かせる。

 妖精は数百の数まで増えるとより大きな魔方陣を描き出す。

 それは私を中心に描かれてより大きな力となって返ってくる。

 大地の力強さを感じる。

 アンラマンユによって狂わされた大地でもまだこれほどの力がある。

 今ならあのアンラマンユですら対等に戦える気がする。

 私はアンラマンユと戦うために力を持った精霊を呼び出す。

 その召喚に最初に答えたのは戦乙女だった。

 ヴァルキリー達は黄金の鎧で私を飾り付けて一振りの宝剣を持たせる。

 私の純白の髪は金色に輝き、祖国バステアの象徴である猫の刺繍が入った白いローブから白虎が三体飛び出した。

 体に力が宿る。

 私の瞳は金色の輝きを放ち、天に向かって視線を向ける。

 そこにいる闇の王アンラマンユを見つめるために。

「剣霊よ。 我が心に宿り我が賢の心得を与えよ」

 私の言葉に応え、妖精が生み出した魔方陣の一つから剣精が現れ私の心に重なるように移り込む。

「いつもありがとうね」

 その言葉に剣精も心の中で笑顔で応えた。

 服から飛び出した白虎は白い雲を吐き、私の足場を作り出した。

 それに乗って天へと向かう。

 この戦いを始めた闇の王アンラマンユに向かって。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔陣士フィリア 最後の物語 大王さん @daiousan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る