第50話「騎士長の復活」
「ん……っく!」
アイラは目覚めると身体に異変を感じる。妙な重だるさがあるのだ。
「なん、だこれ……」
瘴気を巡らせて強制的に身体を動かし、近くの岩にもたれる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
おかしい……何があった? こんな時に寝てた?
「シャーリーは?」
駆けつけてくれたはずのシャルレの姿がない。リゼルは確かシャルレの近衛が連れてったはずで……。
「痛っ!」
思い出そうとすると頭痛が響く。これはただごとではない。恐らく薬品の類だ。
「一体誰がこんなことを……」
まだクラクラする。思考がまとまらない。ふと手を見ると魔導通信機が握られていた。
「これ……あいつらが?」
王の剣と呼ばれるこの国最強の聖騎士達。
「……繋がれ」
耳に付けてみる。通信してるようだが反応が無い。
「ドラゴンと戦ってるせいか?」
何れにせよ王の剣と呼ばれるような連中だ、ドラゴンの心配は要らないだろう。気になるのはシャルレだ。
「こんな時に頼れるって言ったら、あいつか」
めちゃくちゃ重だるい身体を瘴気を使って無理矢理動かす。長時間は体が持たないから休み休み行かないといけないか。
「まったく……誰だこんなことしたのは!」
愚痴りつつも身体を引きずり、なんとか騎士長の家までやってきた。
「入るぞ!」
丁寧な訪問が出来る状態ではない。ドアを蹴破ると、そこには全裸の騎士長が髪をタオルで拭いていた。
「アイラ……?」
「いい気分のところ邪魔する……ぞ……」
すでに限界だったアイラはその場に倒れる。
「アイラ!」
慌ててタオルを腰に巻いてアイラを抱き抱えリビングのソファに寝かせる。
「何があった!?」
「はぁ、はぁ、分からない。多分薬品を……目が覚めたら……シャルレが消えた。近衛騎士が一人……」
意識が沈むギリギリのラインで伝えるべきを伝える。
「近衛騎士が二人を? まさか……いや、お前を見るに事実なのだろう。他には」
「リ……ゼルを……連れ……て」
「リゼルだと!?」
「た……のむ。シャーリー……を」
そこでアイラの意識は途切れた。
「シャーリー……もしやシャルレ様か? お前はいつの間に……」
改めてアイラを寝室のベッドへ運ぶ。
「とにかく今は安め。タイミング良く私は今しがた回復したところだ。あとは任せろ」
手を握ると、心なしかアイラの表情が安らぐ。
「フッ……」
そして険しい騎士長の顔になると急ぎ支度を整える。
「水鳥はどこかへ行ったままか」
いや、そうだ伝令を頼んであった。
「まあいい、城が先だ」
緊急用信号弾を打ち上げると、しばらくして早馬が到着した。
「騎士長殿! いかがなされた!?」
「至急城へ! 緊急事態だ!」
「はっ!」
詳しくは後だと察した兵士は騎士長を乗せて全速力で城へと走る。
「戦況は分かるか!?」
「はっ! 私が聞き及ぶ限りでは王が剣をお抜きになられたとのことです!」
「王が!? それは真か!」
「はい!」
なるほど、それほどの緊急事態ともなればアイラがああなるのも頷ける。
到着すると兵士に水鳥と主治医を呼ぶように伝えて鍛錬場へ向かう。寝起きで戦うわけにはいかない。例え時間が無いとも可能な限り身体は動かしておかねばならない。
鍛錬場で準備していると早速水鳥が来た。
「お呼びでしょうか」
「早かったな」
「王が剣を抜かれましたので、待機しておりまりした。……お身体のほうは?」
「うむ。お陰様で回復した。迷惑を掛けたな」
「いえ……」
「お前にしか頼めないことがある」
「なんでしょう?」
「先ほど、アイラが私の家に来た」
「アイラさんが?」
「何かの薬品で身体の自由を奪われているらしい。ボロボロになってまで私を呼びに来たよ」
「まさか……あのアイラさんが?」
「一つは、アイラを警護してやってほしい。あいつは戦力だ。それに恩人でもある。それと、もう一つは内密に探れ。シャルレ様が消えたそうだ」
「シャルレ様が!?」
「声を抑えよ」
「失礼しました」
「シャルレ様は何らかの理由でアイラのところに居たらしいが、目覚めると消えていたそうだ。恐らく自分の限界を悟って私に頼みに来たのだろう。そして最後に、シャルレ様の近衛騎士を監視せよ。怪しい動きがあれば報告しろ。以上だ」
「シャルレ様と近衛騎士の件では私はアイラさんから離れなければなりませんが……」
「そのさいはセンドックに見てもらおう。アイラを診てもらわねばならぬしな。難しいとは思うが、なるべく昼間と夜の両方で探ってほしい」
「ではそのように。……また叱られますね」
「甘んじて受けるよ。頼んだぞ」
「はい!」
水鳥が行くと、騎士長は鍛錬を始めた。
王が剣を抜かれた。その意味するところは王国が滅亡の危機に瀕する事態だということだ。それにリゼルまで……。
――一体何が起きている!?
ドラゴンに呪われた少女 そらり@月宮悠人 @magica317
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