第49話「ドラゴンじゃない」
「ほほう、これはなかなかに壮観じゃないか」
眼前に迫りくるドラゴンの軍団にガラードが唸る。
「ゆくぞ!」
大剣を構えると、〈
「
アイラには説明しなかったが、ドラグァテムにはエンチャントともう一つの隠された機能がある。
武器によって
ガラードの
「ヌゥん……!!」
小枝のように。とまではいかないものの、<
ガラードの大剣は希少な鉱石で造られた特注品で、振るう速度によっては鋼をも切り裂くというまさにガラードのためにあるような武器。そこにエンチャント効果が乗るとまさに鬼に金棒である。鉄よりも硬いと言われるドラゴンの皮膚さえも容易く切り裂くことができる。
「先ずは一撃!」
意気揚々と戦うガラードの上を跳ぶのは女性剣士のイリーナ。彼女の戦い方は少々特殊で武器を持たない。
「いくよ、閃華、蓮華」
呼びかけると、それに応えるように背にある短剣が鞘から飛び出しひとりでに空を舞う。
エンチャント能力<
イリーナはただでさえ難しい難度Cの剣舞をドラゴンと戦いながら空を舞って行うという離れ業を披露した。
「二人ともさすがだなぁ」
そんな常人離れした戦いを一歩引いてローウェンは見ていた。
「しかし腑に落ちない」
天地を統べるとも言われる竜族の長、ひいては生物の頂点に君臨するドラゴンが軍隊の真似事をするなんて見たことも聞いたこともなかった。それに二人の攻撃に対する反応も薄く威厳が感じられない。
何かある。直感でそう感じたローウェンはドラゴンを深く観察する。
「なんてことだ……」
業火の如く強烈なドラゴンのオーラは暗く淀み、まるで動く死体を思わせた。
「こんなのはドラゴンじゃない……!」
ネクロマンサー? いや、ドラゴンの死体を使役するなんて、古代魔導をもってしても不可能なこと出来るわけがない。そもそもドラゴンの死体を用意するなんて物理的に無理がある。
「いや、西なら……」
技術大国の西であれば、あるいは操るくらいのことならやってのけるかも知れない。
「二人とも、よく聞いてくれ」
耳に付けた魔導通信機で話しかける。
「説明は省く。ドラゴンが操られてる可能性が高い。僕は術者を探す。二人はあえてこのまま戦闘を続けてくれ」
「相分かった!」
「了解。気をつけて」
……西が動いてるとなると、傍受される可能性もあるか。
既にされたとも考えられるが、念の為に通信機は機能をオフにする。
「さて、どこに隠れてるかな」
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