第8話
「しかし、でっかい部屋だな。うちらの雑居とは大違いだわ」
玲奈は感心するのも無理はない。兄は一人暮らしのくせに4LDKを独り占めしている。特に私たちがいる吹き抜けのダイニングルームは、20畳以上あり6人という大人数でも狭いとは感じなかった。当然、物置同然の部屋もいくつかあり、はっきり言って宝の持ち腐れに近いのが現状である。
「法子さんでしたよね?五月蝿いですが気になさらず座ってください」
新風は、テーブルに座ることを躊躇いがちな法子に対して紳士に着座を勧める。
「そうそう。鬼の居ぬ間って奴だよ」
「さすが、黒為先輩!いいこと言うな!」
法子の緊張を和らげるためであろうか、黒為は椅子に座り大きく仰け反りリラックスしているし、玲奈はテーブル中央にあるお菓子を頬張っている。
広い部屋の中央にあるテーブルに6人が着座し、意外にも弛緩した空気が流れる。
一人を除いては、
「…なんでよ」
その中で、部屋に入るや否やジャージへと着替え、しばらく顔を伏せ沈黙していた愛実が急に声を上げた。
「あり得ない、なんで…何でこの女がここにいるのよ!」
顔を真っ赤にしながら、ビシっと玲奈を指さした。
「いや、おめーが何でいるのか、そこが一番謎だろ」
むっと玲奈を睨み、つい皆が沈黙がするがその沈黙は「そりゃそうだ」という賛同の沈黙に他ならなかった。
この部屋にしても、ピンクのカーテンや見たこともないダブルソファーと来なかったうちにいくつか模様替えがされている。
しかも、兄のエロ本なのか「尻、ラインのすべて」と書かれた雑誌がヒモで縛られている。
間違いなく、愛実がやったことなのだろう。
まあ、怒られることも辞さない愛実らしいが。
「まあ、ここは全てを忘れてさ。パッと騒ぎますか!ん、この匂いはカレーだろ!うまそう。早くカレーを食べようぜ」
沈黙を嫌い、黒為は席を立ち、台所にある鍋の蓋の中身を確かめるとそそくさとお皿に装っている。
素早く新風も立ちあがり、ご飯を準備する。
このあたりの気の付く感じが、女性のハートを掴んでいるのかもしれない。
配られる皿を見て、愛実は真向かいにいる玲奈にボソりと呟く。
「毒でも入ってるんじゃないかって思ったでしょ」
「ああ、でも兄貴の家でそんなことしねーだろ」
気まずい空気が支配し、無言のまま皆淡々と出された食事に手をつける。
「そう言えばさ、あの海凪人はまだ見つからないのかよ」
「あんたも幹部何だから知ってるでしょ。どういう訳かこの三日間、アニマ会員全員で探しまくっているけど、見つからないのよ」
露骨に不機嫌な愛実に黒為は話題を振るが、機嫌は治りそうにない。
海凪人が病室から消えて3日間、禁術行使の件でアニマは海凪人を指名手配しているが全くその消息が分からないでいる。
「ええ、不思議ですよ。この市は自体はそれほど広い市じゃないし…総勢300名近く放って手がかりなしですからね」
新風も、何とか盛り上げようと話題を広げようとする。
「そう言えば、法子ちゃんは知らないかしら?海凪人がどこにいるかって?」
え?と突然話をふられたことに驚き、首を勢いよく横に振る。
法子の目線は完全にカレーに行き、もくもくとカレーを食べ続ける。
「そっか、でも彼氏なんでしょ?携帯とか連絡とってんじゃないの?」
愛実先輩の突飛な発言に、皆が驚いてしまうがそこに玲奈が口火を切った。
「おめー、なんで付き合ってるって知ってんだよ!」
「は?勝手にあんたの飢えた脳みそで思考しなさいよ」
ダメだ、玲奈と愛実では会話が完全にデッドボールになってしまい全く進まない。
「どうしてわかったんですか?愛実先輩?」
「もう、真理ちゃん。そんなに知りたいの?実はね…」
「愛実さん、それはちょっと機密事項に抵触しますよ」
新風が珍しく慌てて割り込み、黒為も「人として、ちょっとさ」とツッコミ混じりに静止させようとするが、まったく愛実は聞こうとしない。
「別に隠すことじゃないわよ」
「なんですか~、気になりますよ」
愛実の意味あり気な態度に、私はできるだけご機嫌を取るつもりで、話に乗っかった。
「別に大したことじゃないのよ。ただ、海凪人の部屋を調べに行って、ついでにラブレター見ただけだもん」
え?ラブレターを、見た?
「は?あんた、勝手に人の部屋に入ったのかよ!つうか、ラブレターを見たって…ほんと頭大丈夫かよ」
「え…見たんですか」
玲奈の呆れ気味なセリフに当然ながら同調するし、送った法子ちゃんにそれを言う神経を疑いざる得ない。
「ちょっと!だって海凪人は禁術使って行方不明なのよ!だったら探さなくちゃダメじゃない!そこにラブレターがあったら見るでしょ、普通」
「見ねーよ、つうか、送った相手に言わんだろ。信じられん性格しとるな。法子…大丈夫か?」
法子の顔色が血の気が引いていくというか、明らかに血色を失っていく。
「だ、大丈夫だよ。見られちゃったんですか…」
「別にいいじゃない。例えばよ、これが法子ちゃん以外の人間に蔭口のように言って回ったら、これはもうイジメよ。それはいけないわ!でも、私は本人の前でしか言わないし、この人間たちなら他言はしない。だから言ったのよ」
「だからって…中身まで見なくてもいいだろ、別に」
愛実は自信満々に弁解するが、どうにも旗色が悪い。
しかし皆の冷たい視線に堂々と突っぱねてみせた。
「証拠として押収して、私は中身を検閲した。この行為は実に権限内であり、正当な業務行為なのよ。そうでしょ、新風君?」
「え?そうですね……正確にお答えがほしいですか?」
新風の真顔の答えに、愛実は「長いからいらない!」と突っぱねた。
「それより、あの中身で気になることがあるのよ」
愛実は急に真面目な空気を作り出そうとするが、玲奈はそれを静止させる。
「可哀相だろうが、人の、その…ラブ…レターを、言うのはさ」
照れながら言う怜奈を無視して、愛実は話を続ける。
「どうしても確認しておきたいことがあるのよ。法子ちゃん、あなたサイレントラインで密会していたでしょ?」
法子は、何も言わずただ頷いた。
サイレントラインは、この魔法学園と一般都市の境界線。白い霧状にこの学園を包み込む魔法の障壁である。その壁で密会というと…
「あいつ、いつも深夜の警備をかって出ていたからおかしいとは思っていたけど。それでね、一つ聞きたいんだけど、具体的に何をしていたの?手紙じゃ、サイレントラインの話はよく出ていたけど、どうにも具体的に何をしていたのか解らないのよ」
「その…話をしていました。私の学校のこととか…他にもいろいろと」
確かに、サイレントラインは物体は遮断できても音は遮断できない。大して厚さもないわけだから会話は可能でかもしれない。
「別に、メールも電話もできるでしょうに。まあ、内容は録音されたりと不自由は多かったと思うけど」
愛実の質問めいた言葉に、法子は怪訝そうな顔で質問し返した。
「何が…言いたいんですか」
「そうね、仮にあなた達がもしサイレントラインの壁を壊せたとしたら、海凪人はもうこの学園に居ないってことになるでしょ。そうすると逃亡ってことになるのよ。もちろん、あの壁は一般生徒がどうこうできるような壁じゃない。でもね…」
「海凪人が禁術を使ったなら可能かもしれない、ですか?」
新風と黒為は、いつの間にか皆が平らげた食器を片づけている。
「できるんですか?そんなことが…」
「不可能でもない…ってところかな。でもね、昨日サイレントラインの壁まで調べた連中の報告じゃ、空間の歪が出来ていたんだって。だったら一番近い可能性を追うのであれば…」
皆の視線は、法子に向かう。
「私は…いつも壁越しに話をしていただけです。そんなに悪いことなんですか!霧の間で会話することが!」
珍しく強い口調で、法子は反論する。
「まあ、悪くはないでしょうね。でも年頃の二人がね…それだけ毎度と話していれば、体で伝えたくなるのが普通でしょう?」
「まあ、あんたとは違うってこったな」
「こっちにはこっちの事情があるのよ!」
玲奈のツッコミにプイっと顔を撥ねる愛実。
「実はですね、こんなものがありまして…」
台所から新風が私たちに、携帯電話であるサイトを紹介する。
そのサイトは、魔法学園の生徒だけが使うことができるサイトであり、そこには情報はもちろん、魔法研究についてもいくつも記されている。
その中で、新風が見せてくれたものはオークションサイト。
そして、そのオークションには「禁忌の魔導書、販売」と書かれた出品物がある。
「どうにも困ったことにですね。あのバトルの後に禁術書が好評でして、特にここです」
確かにいくつかの出品主が販売している。
その中に海凪人の文字が記されている。
「禁術を販売されるのは困るんですよ。結構売れてましてね、これが」
確かに買手がいくつも並んでいる。
「魔法印だけ持っていてもあんまり意味なんてないのにね。まあ、Eランカーであれだけの召喚獣出せますと言われれば、買いたくもなるのかな」
あっけらかんと笑う愛実に新風は「そうですね」と軽く笑いかけた。
「禁術でも、やっぱり魔法印を知っているだけじゃダメなんですか?うまく操れるかもしれないし…」
私の言葉に反応し、愛実は鋭い視線を見せる。
「真理ちゃん、知っているでしょ?魔法印だけ知っていても召喚獣は呼び出せないし、仮に呼び出しても召喚者たる本人が召喚獣のことを知らなければ互いが解らなくなる。結局は貪欲に練習を積み重ねて、自分なりのしっかりとした物語を描けなければ意味がないのよ。焦る気持ちわかるけど、今は、洸優の言うこと聞いてしっかりと練習しなさい!」
愛実の説教に私は反論できず、玲奈もこちらを見て頷きを見せる。
焦りがないわけがない。
1年間以上経っているにも関わらず、Eランカー。この成績は全生徒の80パーセントを割っているということだ。
母体の60パーセントを占めるD、Cランカーならば解るが、1年経過してのEランカーは少ない。
であれば、僅かでも藁があれば掴みたいのだ。
「なんだ、せっかくだって言うのに説教かよ」
台所から黒為が剥いたリンゴを皿に乗せてやってきた。「違うわよ」と愛実のセリフに黒為は「あーん」と、私の目の前に切ったリンゴを差し出してくる。
突然の行動に、私はそのまま目の前にあるリンゴにかじりついた。
「うめーだろ。これ、俺の田舎で取れたやつなんだよ。ははは」
私が黙って頷くと、黒為はそのまま座って皆に林檎を勧めた。
「実際、禁術にすがりたい気持ちはわかるんだよな。自分には魔法が発現した!ってわかったら、自分が特別な存在に感じる。でも、ここに来てみれば皆魔法が使える。結局井の中の蛙だって思い知る。しかも、新宿事件以降は魔法使えるってだけで変人扱いだしさ」
確かに私も最初に魔法発現した時には、選ばれたという興奮で盛り上がった。
兄が先に目覚めていたから、私もなんて淡い希望をもっていたんだっけ。
「でも、もう魔法を使える俺たちには、居場所がここしかない。ここでダメだったらって考えると怖くなっちまう」
黒為の言葉に誰も何も言わない。
「みんな経験あるだろ?そうだ、発現した時の経験!わくわくしたよな!」
「あたしは黒為先輩のいうことはわかるよ。わくわくとかじゃないけど、こう、気持ちが高ぶったんだよな」
「だろ!自分がどこまでできるんだろうとかさ。期待してウズウズしちゃったよな。ついに、天は俺に力を与えたかみたいなさ」
「そうですね、僕もはじめて魔法が使えた時は覚えていますよ」
新風も笑いながら会話に参加してくる。
「法子ちゃん、あなたはどうだったの?」
愛実の不意の質問に、法子は嬉しそうに答えた。
「私も最初に発現した時には感動っていうか、嬉しくなりました。神様が私に与えてくれた力なんだって…魔法以外取り柄なかったですし」
「わかるわ~」と共感する黒為に、ふふっと法子は軽笑いを見せる。
黒為が女性の扱いに長けているのか、その後、法子も率先して会話に入ってきた。
それから小一時間、皆が魔法発現の思い出や、思い思いの魔法使い像を語っていた。
最終的には魔法学の話になり、議論は白熱していった。
魔法論理の通説を押し通す玲奈に対して、意地悪く少数説で批判していく愛実。その再反論で黒為と新風がフォローを入れる。そして法子が自説を述べる。何とも魔法学生らしい討論が続くことになった。
法子の熱く語る魔法理論に私は少し反省していた。
学園入学して4日目、兄の話ばかりで部活ではこういう話をすべきだった。
私も入学した当時は、同級生と上位ランカーになる夢や魔法印やその物語、論理について、拙くとも喧々諤諤の議論をしたことを思い出していた。
「いやーいいな!やっぱ新入生がいると。最近は暗い話ばかりだしな!あはっは」
気がつくと、テーブルにはいくつかのお菓子や飲み物が置かれている。
盛り上がりの最中でもそつなく黒為や新風が持ってきてくれるのだ。
「ちょっと、黒為!ビールなんて開けんじゃないわよ!」
黒為から愛実はビールを奪うと一気に自分で飲み干した。
できるだけ目立たぬように飲んでいたのだが、だんだんと上がる黒為のテンションに気がついたのだろう。
「大体、これは洸優のでしょ。しかも未成年者も居るのよ。自嘲しなさいな」
と言いつつも愛実は冷蔵庫から、ビール数本を出してくる。
「あの…年齢とか大丈夫なんですか?」
「いいのよ、魔法使いになると年齢という概念はなくなるから」
私たちの驚いた様子に、新風がそっと「嘘ですよ」と耳打ちしてくれた。
「真理ちゃんと、法子ちゃんはダメ!まだ脳細胞が出来上がっていないんだから」
びしっと指さしながらも、勢いよく次々とビールを平らげていく。
「あとね、あの人は意外と20…」
カンっと空き缶が新風の頭にあたり、駆けつけ2杯をたいらげた愛実の目はすでにすわっていた。
新風は「失礼しました」と言ってすっと席に戻る。
「そうだ。そういえば法子ちゃんは明日、初ランカーバトルなんだろ」
「はい。そ、それで…」
黒為は、愛実の態度に話題を変えた。
「お兄ちゃんの部屋に来れば強さの秘密がわかるかもしれないって言っていたもんね」
「うん」
「ほほう。目の付けどころはいいじゃない。でもね、洸優の強さは真似てどうにかなるもんじゃないわよ。テレビとか見ちゃったらそうなっちゃうか?」
「ええ…まあ、そんなところです」
やはりまだ、海凪人との戦いのせいもあるのか愛実に対しては、法子は言葉を萎縮する。
「いっつも、法子ちゃんは部室でお兄ちゃんの試合を見てるもんね」
「そうなんです。かっこいいなって思っちゃって。NO1ランカーは伊達じゃないっていうか」
私の言葉には、嬉しそうに反応する。
愛実と私との対応の差、ある意味裏表がはっきりしているのだろう。
「でも、洸優の部屋に魔法やら強さのカギになるものなんて、あの部屋ぐらいだしな」
黒為の視線の先には、台所の奥にある一つの部屋を指していた。
「まあ、開かずの扉を開けるわけにはいかないですからね」
「ダメよ!あそこは洸優しか入っちゃダメなんだから」
その部屋は、自分は入れるくせに『開かずの間』と銘打った部屋で、他人を入れることを絶対禁止している。
「あの、あそこの部屋って何ですか?」
「兄の蔵書部屋。開かずの間とお兄ちゃんは呼んでるのよ。まあ、中はほんとに蔵書とかしかなかった気がするけどね」
内緒で入ったことがあるが、大したものは正直ない。
魔法関連の書籍が並んでいるが、兄自身が読んでいないのだろう。
綺麗に整頓されたまま、部屋のオブジェとしてあるだけである。
「だめよ、あそこは私でも入らないようにしているんだからね」
「そうなんですか…」
その言葉に落胆の色を見せる法子に、私は興味本位に質問した。
「気になっちゃう?」
「まあ、その…」
「そっか、私も初戦の時は緊張したな~。でも大丈夫。法子ちゃん毎日夜中まで練習してたんでしょ?」
「え?うん…さすが部長、気がついていたんですね」
「部長として当然だよな!」
玲奈の言葉に法子は恥ずかしそうに笑うが、たぶん半分は海凪人が心配で探し回っていたんじゃないかと思う。
「で、どんな作戦考えているのよ。お姉ちゃんに教えなさい!」
そう言うと、愛実は法子を後ろから抱き締める。
「わ、私は、全力で戦います!」
無理に振りほどこうとするでもなく、ただ座ってそう答える。
海凪人のこともあるのだろうか、少し沈んだ顔をみせる。
そして、「トイレに行きます」とだけ言って法子は席を立ってしまった。
「もう、法子ちゃんは素直じゃないわね」
私にはこの人の思考回路はよく解らないが、愛実としては素直じゃないのだろう。
しばらくして、トイレから帰ってきた法子に愛実はリトライをかけた。
「きゃあ!」
「なに?気になるのかな~」
開かずの間の近くにいる法子に愛実が覆い被さり体を預けている。
「気に、なりますよ…」
「へー、そうなんだ…ん?」
愛実の表情に、法子は不思議そうに「どうしたんですか?」と聞いてくる。
「いや、何か音がしなかった?」
「え?そう、そういえば、何か…」
その言葉に、私たちは開かずの間に駆け寄った。
「音?なんだよ、それ?」
「法子ちゃん…覗いちゃおうか?」
「…え」
愛実の意外な発言であったが、次の音に私たちは驚いた。
バタっと大量の本が落ちた音が聞こえた。
私は、すぐさま二人を押しのけ開かずの部屋のドアに向かい、ドアノブに手をかけた。
開ける理由は二つ。
一つ目は、私はこの家に泊まるのだ。このまま不安を抱えて安眠などできないであろう。
二点目は、もし、鍵のかかっていないこの部屋で、愛実が部屋に入りいろいろと弄っていたとしたら、その被害は間違いなく私に来るだろう。
「……ド、ドアが開かない」
その反応に、皆が私の元に来る。
「そりゃ、鍵してるんだろ?」
「黒為先輩、それはないんです。兄はそもそもこの家に他人が来るのを嫌がっていて…だから自分だけの空間に鍵をつけるなんてそもそもしないんです。兄の変なプライドかけて」
「開かずの間なのに?まあ真理ちゃんがそう言うならそうなのか…確かにあの兄貴はプライドはマジで高いからな」
「じゃあ、全然開かずじゃないんですね」
今度は、ゴッと何か物がぶつかったような音がする。
私はもう一度扉を開くと、今度はすんなり開いた。
入って見ると、6畳程度の部屋に壁沿いに本棚がびっしりと敷詰められている。
月明かりのみの真っ暗な部屋の奥で、もぞっと大きな塊のようなものが動いた。
その物体は、部屋の窓を開けようとしている。
「海凪人!」
愛実の叫び声に、ゆっくりと男は振り向いた。
「う、海凪人…」
「ひぃ!」
その表情は、怯えきりまるで化け物でも見るような怯えた眼で見つめてくる。
そして、そのまま部屋の奥にある窓から身を乗り出し飛んだ。
「法子ちゃん!」
素早く法子は窓の方へ走っていくが、寸でのところで私は彼女を掴みとめた。
「ちょっと、落ち着いて!」
「どうした?」
狭い扉から、黒為たちが入ってくる。
「今ここで、海凪人先輩が…」
そして、愛実がビールをぐいっと開け、淡々と言った。
「真理ちゃん、ここも安全じゃないかもしれないわね」
ロリ×マジ ACT1 魔法論理研究会。 ぷーさん @comicmaster
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