Theme B From/For-into the end

 ずっと、ずっと遠い昔、テイアが彼方より運んできた。劇的な偶然が重なりあった。引き離されていく運命に縛られる、傍観者でしかないわたしが生まれた。わたしはそれを知っている。違う。わたしはこれまでの全てを知っているのだ。ずっと、ずっと見続けてきた。わたしは、わたしとして生まれたその時から観測者だった。わたしがわたしとしての役割を終えるその日まで、きっとそれは殆ど変らないだろう。

 灼熱の海が果て、ひとときの静寂が生まれた。静寂は次第に死んで行き、ざわめきが全てを掌握していった。全てを眺め続けてきたわたしは知っている。全ては生まれ、集まり、別れ、砕け散っていく。そしてまた、生まれる。全ては閉じた環の中で完結する。これまでに誰もそこから逃れ出ることは出来なかったし、おそらくはこれからも。だからわたしは、世界を見下ろしながらずっと、ずっと考え続けているのだ。その環の最初、全ての始まりについて。さて、そこには何があったというのか。それに終わりは? 全てが終わり、閉じた環を回り続ける繰り返しそのものすら定めに基づき果てるなら、その時、そこに何が残るのだろう。解を求めるわけではない。ただわたしは想像する。全てが消え去り、観測者も、観測の対象も等しく消え失せた世界。それはきっと、何処までも続く草原のように美しく、静かで、牢獄めいているのだろう。

 いつか訪れるその日。全ての果て。わたしは想像する。わたしが唯一成せること。わたしは想像する。わたしはそのために在る。そのためだけに、在り続けている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Glorious World Part.2 -HALCYON 北原 亜稀人 @kitaharakito_neyers

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る