量子と魔法がある世界

@sirosaki_yuu

序章

太陽の女神アルフェンと月の女神ルーシャの祝福を受けた世界セルン。

二人の女神を守る四大精霊と、クリスタルからもたらされるエーテルにより約束された繁栄の地。

帝国ルーフェンは、科学と女神の祝福を恩恵を受けて大いなる繁栄をはたしていた。

また、各都市は大小様々なクリスタルの加護を受け、エーテルを用いた様々な科学技術によって

独自の繁栄を誇っていた。



ー序章ー


始まりは、希望に満ちたものだった・・・

帝国暦684年、帝国ルーフェン首都エルテンブルグのクリスタルタワーの中心部にて

巨大なクリスタルを中心に、六基の電磁リアクターが周りを囲み、

今まさに、無限のエネルギーを得ることが出来る反応炉が起動しようとしていた。


アリストテレスが、落ち着いた美しい声で状況を報告する。

「全電磁リアクター起動、アークリンク形成進行中。まもなく臨界に到達します。」

電磁リアクターから、リング状に広がるアークリングが、

ゆらゆらと波紋を出しながらクリスタルを包むように形成されていく。


アリストテレスは、研究所の支援AIだ。その姿はフォログラフで実体化しており

純白のローブを纏い黒髪の美しい女性の姿をしている。


「アリストテレス、対消滅反応炉起動せよ。」

研究所長は静かに命じた。


「対消滅反応炉を起動します。クリスタル内部量子反応上昇中・・・安定しています。」

アリストテレスは、冷静な声で続けていく。

「反物質生成開始・・・対消滅反応を確認、アークリング安定。

クリスタルへのアクセスを開始します・・・エントリー通常モードで順次移行中。」

クリスタル内エーテル反応上昇・・・」


クリスタルからは、美しいオーロラのような光が溢れ出している。

それは、帝国の更なる繁栄を約束する無限のエネルギーだった。

「まもなく対消滅反応が臨界に到達します・・・」

研究員達は、大きく歓声を上げた。

この瞬間、帝国はすべてを手に入れたかに思えた・・・


しかし、大きな警報音と共にアリストテレスが、冷静な声で緊急事態を報告し始めた。

「メインシステムゼノンに、不正アクセス。防壁展開・・・崩壊しました。」


「馬鹿な、ゼノンの防壁を侵食してエントリーするなどありえない。」

「アリストテレス、防壁を再構築、仮想システム多重展開。」

研究員の一人が叫ぶ。


「防壁再構築、仮想システム多重展開・・・防壁再崩壊、仮想システムも侵食されました。

なおも、エントリー進行中。物理レベル層侵食されました。アークリング制御不安定になりつつあります。」


「アリストテレス、アクセス元はどこだ??」

アリストテレスが答える。

「クリスタル内部より、未知の上位精霊と推測。今までに知られていないパターンのアクセスです。」

「未知の精霊だと!?実験は中止だ。アリストテレス、対消滅反応炉緊急停止。物理回線をパージ。」


「対消滅反応炉緊急停止。反応消失を確認。物理回線をパージ・・・ダメです。エーテルで回線が再構築されていきます。

ゼノンへの侵食進行中。対消滅反応制御層も侵食を受けています。」


「アリストテレス、ゼノンを再起動。アークリングの維持にすべての処理を集中させろ。」


「ゼノン再起動実施・・・コマンド無効。再起動できません。再びクリスタル内部に高エーテル反応、対消滅反応が発生します。

対消滅反応発生・・・制御できません。ゼノン沈黙・・・制御、奪われました。」


「まずい、このままでは大陸ごと吹き飛んでしまうぞ。」

「アリストテレス、ゼノン主電源をパージ。アークリング制御をバックアップに移行、最大出力で稼動だ。」


「主電源パージ・・・効果ありません。電磁リアクターバックアップに移行・・・成功しました。」

「クリスタル内部の対消滅反応さらに増大中・・・エネルギー量が10の33乗ジュールを超えています・・・

強力な重力場を検知。クリスタル内部からです。重力場急速に増大中・・・

事象の境界面が出現します・・・アークリングへの負荷が急速に増大、状態を保持できません。」


アークリングが、大きく歪んだと共に小さな光の粒になって消滅していく・・・

クリスタルがひときわ輝いたかと思った瞬間、小さな亀裂が無数に走り。クリスタルは砕けた。

漆黒の球体が現れ静かに大きくなってゆく・・・やがてそれは、研究所を超えてすべてを飲み込み始めた。


帝国暦684年、帝国首都は巨大な闇の中に消失。

残された台地も巨大な衝撃波を受け、大陸の殆どが焼け野原と成り果てた。


ルーフェン帝国崩壊から500年あまり・・・


大陸の中央には大きなクレーターが横たわり、東西に分かれてしまった大陸は、

それぞれに独自の進歩を遂げ、科学帝国グルーオンと魔法王国ジブダールに分かれ対立していった。


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