いやもう、ほんと…

ダウン症のこどもたちを診ています。
生まれた瞬間からお相手をし、親御さんにダウン症の説明を行い、おうちに帰ったあとも長い長いお付き合いをしています(ついでに言うとダウン症の研究もしています)。

当然、お母さんたちの質問にはできる限り答えなくてはいけません。合併症について、遺伝子や染色体というものの成り立ちについて、…などはそれなりに正確に答えられますし、またバリエーションに富んだそれなりの数のこどもたちを診ていますから、正解なんてないと思われるような疑問にも、おそらくは大間違いではない答えをすることができます。

…が。
自分自身が24時間、それこそ育児そのものの常として、寝ても覚めても、平日も週末も、いっしょにいるわけではありません。なのでどうしても分からないところ、肌で感じられないところが出てきます。さらには就学、就職となると、保健師さんでもないのでもうお手上げです。
でも、親御さんの質問には答えてあげたいし、何か力になってあげたい。また分からないままでおいておくのもなんとなく気持ち悪い。そこで、そのようなちょっとしたすき間をうめるために、本やブログなどに目を通すことが多くなりました。ところがこれがまた…

ダウン症関連の本は見事に真っ二つに分かれます。
堅くって、ガチガチで、「いったいこれ、だれが読みこなせるの?」みたいな教科書みたいなものと(なぜかそういうのを買ってしまってあとで後悔します)、あとは日々のただの日記のようなものと。

そのような中で、この作者が書かれている文章はじつに読んでいて味があります。なにかを考えさせてくれます。
朝日新聞の夕刊で、大竹●のぶさんの文章を読んで心からがっかりしたあとに、三谷幸●さんの文章に「さすがはプロのもの書き」と満足するのとよく似た感触というか。「ああ、なんだこれ。じつにおいしいじゃないか」と孤独のグルメ的に満足することができます。

文章そのものに満足することができるのに、しかもそれが自分が知りたい知識と情報を与えてくれる。なんとも贅沢な気分です。

作者の方は「終わりをどうしよう」と思っておられるようですが、人生に起承転結なんてありませんから、そこはゆったり気ままに続けてもらえたらなぁ、と思っています。