第6話アネモネの日々 六話【お店と料理と】
ムーンさんを先頭に私は街を目指して歩いて行った。太陽が真上に昇る頃に街に付き、私とムーンさんはご主人様が行きつけにしている食料品店辿り着いた。
店の中に入ろうとした所、ご主人様と同じ背丈の、金髪ポニーテールの女の子が近寄ってきた。かわいい食料品のアップリケが入ったエプロンをかけているので、この店の従業員だろう。
その子は私の所まで来ると、「あなた、アネモネでしょ?」と問いかけてきたので答えると、いきなり私のほっぺを触ってきた。それから全身をくまなくぺたぺたとしてくる。
「へぇ~!ほんとに造ったんだ!まるで本物!肌もすごいぷにぷにしてる♪」と目を輝かせて、私を触っている。くすぐったい。それに近い。
いい加減止めて下さいと言おうとしたら、ムーンさんが察したのか「なごなご~」と声を掛けてくれた。ムーンさんナイスです。
女の子はムーンさんから促されて、「あぁ、ごめんごめん。初対面で迷惑だったね。私はプリシラ!このお店の看板娘ってとこよ!レイから連絡が来てたから、困ってたら助けてあげてねって。」
ご主人様、申し訳御座いません。気を使っていただいて。これは帰宅したら腕によりをかけて料理を作らなければ。
「お心遣いありがとうございます。」
「うん!私は店の中で仕事してるから、何か困った事あったら声を掛けてね。」
「はい、かしこまりました、プリシラ様」
「固い、固い、そんなかしこまんなくって大丈夫だよ。もっと楽にね。それにプリシラでいいよ!」
「はぁ・・・楽にですか、それとご主人様のご友人を呼び捨てになんて」
「大丈夫大丈夫!もう友達でしょ!それに表情も固いし、もっと笑顔出してみなよって。こんな感じに!」
そう言うとプリシラ様口元を上げて「にーっ♪」と笑顔というものを出してみせてくれた。むむむっ!。
「こっ、こうですか?」私はなんとか口を横に開いて、笑顔なるものを作ってみた。
「うっ!・・・」なんでしょう、プリシラ様の顔が非常に歪んでいる様に見えます。それにムーンさんもなんで両手で顔を抑えているんですか?
「ごっごめん!まだちょっと無理だったみたいだね。ハハハ。」
「申し訳御座いません。プリシラ様」
「大丈夫だよ、こっちもいきなりだったし、それとプリシラ!プ・リ・シ・ラ」
「ぷっ・・・プリシラさん」
「まいっか。それで許してあげるよ、ごめんね買い物来たのに時間取っちゃって」
「いえっ、気になさらないで下さい。」
そういうと私はプリシラさんと別れて、買い物を行いプリシラさんに清算を済ませてもらった。
「は~い、2500ルウね、今日はビーフシチューなのか」
「はい、ご主人様の好物と聞きましたので。」
「いいな~、ねぇ、私も休みの日にお邪魔してもいい?」
「はいっ、ご友人の方でしたらご主人様の歓迎されると思います。」
「やた!」
そして私はお店を出ると、そういえばムーンさんがいない事に気が付いた。
あたりを見回していると、お店の壁に背中を預け、肉球ポシェットからおやつのクッキーなるものを両手でつかみ食べていた。器用な・・・
私はムーンさんが食べ終わるのを待ってから一緒に帰宅した。
そして、夜になりご主人様に料理を作って差し上げた。
あっ!ムーンさんのも忘れていませんよ。
「あ~!お腹減った・・・おっ!いい匂い。まさか今夜はビーフシチュー?」
「はいっ。ご主人様の好物をお作りしました。どうぞ」
ご主人様は目に星が見えるくらい輝かせて、シチューを口に運ばれた。
初めて作ったのでお口合うでしょうか?
私がご主人様の様子を眺めていると、
「うん♪おいしい!何杯でもイケるわ!」
「光栄です。まだお代わりがありますので。」
そのあともご主人様はスプーンを止めることなく、作った分全部食べてしまわれた。
なんでしょう、ご主人様が食べている所を見ていると胸のあたりが変です。どこか
異常があるのでしょうか?
「あ~食べた食べた☆」とご主人様は、大きくなったお腹をさすりながら、私に「あっ!アネモネ笑ってる!」と私に言った。
笑う?私が?そういわれて食器に映った自分を見ると、プリシラさんに見せてもらった様な笑顔なるものが浮かんでいた。
これが笑顔?
これが私が始めて笑顔という感情を知った日。
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