第2話

このあたりの病院はよく知らない、家の近くのかかりつけ医からは反対方向だし…と、しばらく歩くと古びた看板が目に入る。中原医院…なんか、医院の漢字が旧字体なんだけどしかも庭がジャングル並みに茂ってるしそもそも営業してるんだろうか?でもかなり深刻な症状だったし(幻覚)とりあえず入ってみようかな…。

雪路は自転車を木の下に止めると、目尻から何か出ていないか手で確認しながら中原医院のドアを開けた。


建物もかなり年季の入った作りだ。洋館風の建物でツンと消毒薬の匂いがする。受付には誰もおらず、待合室にも誰もいない。

「すみませーん、診察してもらえますか〜」雪路は受付を覗き込みながら声をあげた。あれ、いないのかな?もう営業してないかな、古いし…と後ろを振り返ると

「ギャ〜〜〜」

至近距離に白衣の男が立っていた。髪はモジャモジャのボサボサ、ヒゲうっすら、メガネで年齢不詳、背がかなり高い痩せ型の男。

「あぁ、すまない。脅かしてしまったな。」

尻もちをついた雪路を立たせながら白衣の男は頭をかいて謝った。

「診察室、コッチ。どうぞ」

腰が抜けた雪路を後ろから支えながら、診察室へ通された。山積みの書類の中にパソコン、その他は昔ながらの診療所といった内装だ。

雪路を椅子に座らせ、男は書類の山がある席に座る。

「で、どうしました?顔色悪いね?…あ、ここね実はまだ本格始動してないんだよ。ボクの父がやってた診療所なんだけどこの夏からボクが継ぐことになってね。まだ準備中。でも大丈夫だよ、急患は見ることにする今日から!専門は内科と小児科。」男は笑いながら話した。見た目より若いの…かもしれないが30代だろうと予測する。

雪路はさっきの一件を一気に話した。

「で!目から手が出て虫を捕まえて!虫がピカッて煙になって!手は目にもどったの。」

………沈黙。

「あー…、熱、計る?」

雪路は後悔する。完全にイタイ子だわこれ…誰が聞いたってイタすぎる。


体温計を受け取り素直に熱を測る。

ん?

34.0?

「先生、体温計壊れてるみたい」

「見せて!…うーん、そうか。」

中原はしばらく体温計を見つめたまま、自分のヒゲを手で撫でながら思案している。

「あのぉ?」

「君さ、いつも体温低いの?」

「いえ、むしろこども体温なんです。」

「具合が悪いわけじゃない?この体温だとはっきりいって普通じゃないはずだ。」

「いや、だから体温計壊れてるって…」

「壊れていないよ。さっきの話、目から手が出たと言ったよね。それは君の見間違いなんかじゃないんだ。いや、まさかこのタイミングで会えるとは。というより、ボクが越して来たから君が覚醒してしまったのか…」



まてまて、この先生やばくないか?

間違えたかな、医者。

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冥土のツカイ(仮) 江富 藍 @etomiai

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