箱入り人類

Kira

第1話

世界とはなんなのか。

宇宙とはなんなのか。

何故人間に解明できない謎があるのか。



日本人には大敵な花粉の季節がやってきた。僕は花粉症じゃないから関係ないがな。しかし春は良い。この心地よい春の日差しが僕を夢の中へ…

「もう準備できたー?」と大声で叫ぶ妹の声を聞きながら僕は夢の…中…へ……

落ち着いて考えよう。今日は入学式、家を7:30には出なければいけない。ところで今何時だろうか…

僕の愛用するデジタル時計には8:00と刻まれていた。


これはマズイ


その刹那、僕は一目散に部屋を飛び出し、2段飛ばしで階段を駆け下りてリビングへ向かった。僕の部屋は2階、リビングは1階である。

「おい妹よ。何故起こさなかった。」

ぜえぜえと息を切らしながら呟く。すると妹は、

「そんなに慌てなくてもまだ6:30よ?」と、言った。

「…なにを言っているんだ。僕の時計は8:00だったぞ?」

ついにこの女、頭がイカれたか?

「そりゃそうね。私が時計を遅らせたもの。」

…は?

「お前だってさっきもう準備できたか聞いてきただろう?」

「ドッキリ大成功ね。」

…こいつはいったいなにをしてくれているんだ。

「お兄ちゃん普通に起こしたって起きないじゃない?だから工夫を凝らしたのよ。目もパッチリでしょ?」

全く可愛い妹だ。殴ってやりたいほどに。

「そんなことより早く朝ごはんを食べましょ?お兄ちゃんがグースカ寝てる間に作っておいたから。」

全く可愛い妹だ。抱きしめたいほどに。

朝食というのは1日の始まりを象徴するものだ。よって、美味しくなければならない。その点この妹は早起きで料理が上手い。なんて素晴らしい妹なんだ。あとは性格さえ良ければ良い嫁になっただろうに。

「お兄ちゃん、今失礼な事考えてない?」

むーっとした顔でこちらを見てきた。勘が良いやつだ。

「そんなことないよ。それよりも早く食べよう。」

朝から妹の逆鱗に触れれば1日に影響する。ここは引くべきだ。今日の朝食はパンとベーコンと半熟目玉焼きだ。なんというザ・朝食。もしも1人暮らしだったらこんな朝食にも巡り会えなかっただろう、というかそもそも起きれないので朝食が食べれないか。うちは親が2人とも外国に行っている。父親の転勤に母親がついて行ったわけだ。別に愛ゆえについて行ったわけではなく、父親が「君がいないと死んでしまうんだ!家事的な意味で!」と情けなく泣いて懇願したからである。僕は父親に似たかな。そんなことはどうだって良い。今は妹との朝食を楽しむことにしよう。


朝食も食べ終わり、満足して寝ようとしたところを妹に叩き起こされながら朝というものは慌ただしく過ぎていく。ん?今の状況を聞く限り慌ただしくしているのは僕だって?

世の中には気づかなくても良いことがあるとだけ言っておこう。と、まあそんな慌ただしい朝をなんとか乗り越え、僕たちは駅までスタスタと歩いていた。

「春とはなんだったんだ?小笠原高気圧も少しでしゃばりな気がするな。」

もう少しシベリア寒気団君がいても良かったんだぞ?

「なに言ってるの…高校の入学式前によくもまあそんなにネガティブになれるわねえ…」

うるさいな、僕の勝手だろう。

そう、僕たちは今日から高校生なんだ。なんで兄妹が一緒に入学式に行くんだと思うだろう。僕たちは一応双子なんだ。妹には、俺たちは双子なんだからお兄ちゃんって呼ぶのはやめろと昔はよく言っていたが、今ではすっかり僕も毒されてしまった。慣れって怖いよね。

「そういえばどこの駅から行くんだ?」

不意に気になったことを聞いてみる。

「そんなことも知らずにいったいどこに歩いてたのよ…」

「お前について行っていたに決まってるだろう。」

「父さんといいお兄ちゃんいい本当に自由人なんだから…」

自由でなにが悪い。自由は最高だ。何物にも変えられない。永久不滅の僕の生き方だ。

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箱入り人類 Kira @kirarararanran

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