ガイア編 一
「おっす、有村。今日も暗いねぇ」
「そうだな」
「......」
「......」
二人の間に静寂が訪れる。
痺れを切らしたのか、少年は声をあげる。
「ってぇ! お前さすがに暗過ぎじゃねえ!?」
「うるさいぞ鍵野。まだ授業すら始まっていないうちに労力を使ってどうする」
「いやいやちょっと喋ったくらいでそこまで疲れないと思うんですけど!」
鍵野と呼ばれたオールバックが特徴的な少年は雰囲気の暗い少年にツッコむ。
「朝からよくそんなハイテンションでいられるなお前」
ぐったりした表情で言う少年。
「そりゃ当たり前よ! 女子にモテるには明るいっつうのが前提なんだぜ?」
「そうか。なら女子について良いことを教えてやる」
「お? なんだよ、教えてくれよ」
有村は一度ため息をついてから、教室のドアの方を指差す。
「いいか。女子っていうのは前提として敵を作っちゃいけないんだ。だからまず最初にどちらが先に挨拶するかを競う」
ドアの前で女子が低い位置で手を振る。
「それで?」
「そして挨拶された方は焦って相手よりも高速で手を振る。ほら、あんな感じにな」
「おお、本当だ」
「あれはまだ序の口。そこからよく観察することで女子のドロドロとした歪な関係が......「もういいです有村さん」......なんだ、もういいのか?」
有村はがっかりとした様子で外を眺める。
一方鍵野は唐突に女子のドロドロとした部分の一端を知らされ、テンションがダウン。
こうして朝から暗い学校生活が始まるのであった。
(今日は暴神の反応なし、か)
光刃高校に通う有村 影矢(ありむら かげや)は桜の花びらが舞う校庭を眺めながら内心呟く。
授業の内容はきちんとノートにまとめており、ある程度の難度の問題なら即座に答えられる準備はしてある。
そして時はあっという間に過ぎていき、昼休みとなる。
「ウチカツの隣は私のものよ! そこを退きなさい!」
「いいや、僕のものだ。ね? 打勝?」
なにやら教室の中央が騒がしい。というのも光刃高校に突然編入してきた二人の女生徒。
黒髪ロングの強気な口調の美少女、宮野 月乃と自らを僕と呼ぶ銀髪ショートカットの美少女、未然 白羽の影響である。
不本意ながら説明すると、その中心にいるイケメンな少年、荒上 打勝が原因だ。
はたから見たら男の取り合いにしか見えないが、俺は彼らの本性を知っている。
というより仕事柄知らざるを得ないというのが妥当である。
と、それはさて置き、教室が騒がしくなってきたので俺は一人で食堂へと向かう。
あんな空間にいたら耳がおかしくなりそうなものだ。さっさと離れた方が身のためとも言える。
「カツカレー大盛りで」
「あいよ、残したら授業行かせないからね」
豪快に笑いながらそう言う食堂のおばちゃんはみんなの母親のような存在だ。
当然このカツカレーを残したりはしない。
「ふむ、やはり旨い。流石は熟練した食堂の味」
ジューシーなカツと程よい辛味の効いたカレー。さらには噛むごとに甘みの溢れるご飯。これぞ三種の神器。
「ふう、ごちそうさまでした。おばちゃん、今日も美味しかったよ」
「あんがとさん。そう言ってもらえると作った甲斐があるってもんさね」
昼食を終え、教室に戻る途中でソレは起きた。
地面が揺れ、警報が鳴る。
『異常気象が観測されました! 直ちに近くの防護部屋への避難を!』
「......きたか」
俺は意識を切り替え、教員や他の生徒に気づかれないように気配を完全に殺して外へ出る。
空を見上げるとそこにはブラウンの鎧を纏った茶髪の少女がいた。
「あれは、EXランク討伐対象、【ガイア】か!」
Sランクの精鋭部隊二つを壊滅させた最強クラスの暴神【ガイア】。
彼女はなぜか人間を強く恨み、こうして意図的に地震を起こして現れる。
【ガイア】が俺に気づく。
「貴様は人間だな? 疾く死ぬがいい!!」
「ちっ!」
先の尖った岩石が有村を影矢を襲う。
砂埃が舞い上がり、視界が互いに失われる。
「まずは一匹仕留めたか。次はあの妙な武装をした集団を......!?」
「ーーーー 油断したな?」
黒い影が【ガイア】の鎧の一部を破壊する。
「貴様、何者だ」
「ただの人間さ」
「馬鹿を言うな。魔力を帯びていない攻撃は私には通らん。よって貴様はただの人間などではない」
黒い人影を【ガイア】は一部の隙も見逃さず見据える。自身の周囲に数十にも及ぶ岩石を生成しながら。
影矢も臨戦態勢に入り、両腕に黒い霧を纏わせる。
互いに戦闘を開始しようとしたその瞬間、
「待ってくれ!」
一人の少年の声が戦場に響き渡った。
シャドウズ&ブレイバー @grandeur
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