シャドウズ&ブレイバー
@grandeur
プロローグ
「俺は例えそれが偽善であったとしても、貫き通そう。どんなに血に塗れ、汚れても、だ」
黒き影はただ、淡々とそう言った。
「お前はそれでいいのか! 本当に、それで.....」
光を纏う少年は影に向かって吠える。
「構わん。人とは犠牲を払わねば大を守ることができない生き物だからな」
「......分かったよ。俺とお前じゃ分かりあうことはできない。だから!」
光の帯びた大剣を構え、影を見据える。
「力づくで俺を止めるか?」
応える必要はないと言わんばかりに少年は影に接近。
対して影は右腕に黒い霧を纏わせる。
「無駄なことを」
ギィィン!
金属音が甲高く響く。
刃と霧の接触。
拮抗する剣と腕。
本当にそうか。いや、違う。
「その程度の振りで腕の一本も持っていけないとはな。仮にも名高き聖遺物、デュランダルの適合者だろう? 」
「うる、さい!」
一旦距離を置き、大剣を構え直す。少年は眉を顰め、影の強さを改めて痛感する。
「今度はこちらから行かせてもらう」
影の立っていた場所が極小規模で抉れる。瞬間、影は少年の目前まで迫っていた。
「ぐぅっ!」
大剣の腹で迫る拳を受け止めるが、余りの衝撃に後方へと飛ばされる。
追撃。
影は吹き飛んだ少年にすぐ追いつき、二撃目を繰り出す。
「デュランダル!」
聖剣の真名を叫び、解放。
大剣はおびただしい光に包まれ、障壁を生成。
影の拳を防御する。
「ほう......そんな手があったとは。これは驚いた」
拳を一旦離し、低い構えを取る。
「だが、これならどうだ」
纏っていた霧が右足に濃縮され、一切の光を通さない黒へと変貌する。
「なんだ、それは」
少年の背筋に鳥肌が立つ。
本能的に知らされる死の予感。
「影典・黒脚」
空気を裂く音。音速を超えた一撃が障壁目掛けて繰り出される。
凄まじい音とともに障壁が破壊され、そこの地面ごと余波で吹き飛ぶ。
「気を失ったか、情けない」
影は気絶した少年を見て、ため息をつく。
「あの子たちを本当の意味で救えるのはお前しかいない。強くなれよ......勇者」
その紫紺の瞳に哀しみを浮かべ、影は去る。
ここから勇者と影の物語は始まる。
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