真夜中とジレンマ

Kanako

真夜中とジレンマ


ねなくては

ねむたくないがねなくては


ねむらなければならぬのに

ぎうぎうの書棚から

無名の詩集を探すやうに

目は爛爛と冴えてゐる


ねむたくないならねなくとも

おのずと朝はやってくる


かはづのこゑがきこえない

まつくらやみに灯がひとつ

まつくらやみに私はひとり


ねなくては

ねむたくないがねなくては

朝が輝きだすまへに

夜が私を食べにくる


ふつとかはづのこゑがする

いつぴき、にひき、またにひき

それでも月は西へゆく


ねむたくないならねなくとも

おのずと夜は更けてゆく


もういいか

ねむたくないならねなくとも

月を見送るひとりでいいか

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真夜中とジレンマ Kanako @kk0268

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