第27話
何も答えないミハイルにエリザはミハイルにも聞こえるか聞こえないかの小さなつぶやきをし、後方へ走り出してしまった。
その言葉を聞いた瞬間、ミハイルは呆然と立ちすくみ自責に駆られた。そしてエリザが自分と全く同じ境遇ではないかと、確信した。自分を捨てた母と見ず知らずの男の後姿がよぎり脳を走った。何度声を上げても振り返ることもなく、どんどん遠くに行ってしまう。
幼き自分がいかに無力だったかという思い出したくない過去。
オレはアイツ等と同じことをしようとしているのではないか。
そう考えると自分がいかに惨めで自己本位だったのか、悔やんだ。
エリザを追いかけようと後ろを振り返る。すでにエリザの姿は見えない。
「くそっ!」
ミハイルは自分に対してとあの女児にこんな運命を与えた神に呪詛の言葉を投げつけ、走り出した。
小さな村を必死で走り回った。一時間ほどしか走り回っていないが先の戦いで癒えていない身体が悲鳴をあげている。汗をかき体温の上昇のせいで余計に熱く感じた。
ようやくたどり着いたところは、温泉のある裏でエリザはベンチに座っていた。身長が低いせいでベンチに座っている足が地面についていなくぶらぶらさせ、視線の先に広がっている木々を眺めているようだった。
ミハイルは息を整えながらエリザの隣に座った。エリザは驚きもせず視線をミハイルに移すことなく口を開いた。
「わたしって邪魔?」
エリザの問いに窮したミハイルは少し黙り込んだ。エリザはミハイルのほうを向いて続ける。ここに来てから泣いたのだろう。頬に涙を流した後が見えた。
勇者への復讐(仮) ジョン☆ウマボルタ @nike
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