第26話

常にけなげに微笑んでくれているエリザ。ミハイルは数秒間、エリザを凝視した。

 たった数日間だったがそれなりに楽しかった。しかしもうこれで会う事はないだろう。

この微笑んでいる顔がどうミハイルの言った言葉にどう変化してしまうのか不安だった。

 ただ言わなくてはいけない。プライドのために! オレに汚辱をかぶせた野郎をしとめ、親、兄弟も家族も同然だった、団長を殺したヤツを八つ裂きにしてやらないといけない。憎しみをかみ締めることで不思議と口が滑らかになった気がした。

「オレは今日王都に帰らないといけない。エリザのことは警察に伝えておく」

「エリザも一緒に行く」

「駄目だ。お前はここに残れ。オレと一緒にいると危険が付きまとう。きっとすぐに親が迎えるに来る、安心しろ」

「……」

 手を離し数歩前に出る。ミハイルは振り返ることができなかった。

「あの人と行っちゃうの」

 消えてしまいようなか細く弱弱しい声。エリザが一体どんな顔をしているのか想像するのは容易だった。

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