第9話 サバイバルバトルロイヤル(後編)

「さあ、第二フェーズに行きますか。イース。狩の始まりだよ。」


「ケイスケ。あんた何か知ってるの?このデスゲームのことを。」


「簡単な話さ。悪魔は体を求め、神は救うだけなのさ。表向きはね。」

「表向きって何よ。裏を聞きたいのかい?・・・賭けの対象にもなるんだよこのデスゲームはね。おわかりかい。イース。」


「神が賭け事するわけないでしょう。」


「娯楽なのさ。落ちた神・・・廃神のね。窮地に立つと救世主が現れるのさ。俺たちみたいなのがね。利用されることがあるんだよ。」


「廃神って・・・まさか、滅んだ星の星神様とか?」


「神様が開催するバトルロワイヤルサバイバルゲームでは、まずそんなことはないけどね、悪魔が集う今回のようなデスサバイバルゲームは、何が起きても不思議ではないんだよ。もう何人死んだかわかるかい。もしかしたら、復活する者もいるかもしれないぞ。イース。」


岩陰に隠れながらイースと俺は気をさらに引き締めた。そのとき、幻影の黒シュレが目の前に現れた。


「主様、我は影として参りました。いかようにお使いくださいませ。それに、お館様より伝言がございます。異世界ノアと同じ環境が整った。そのように申されました。また、女神テラ様より悪魔たちが、この地に7つ降り立つとのことです。タイムリミットは12時間です。さらに奥方様に至っては、朝帰りは許さないと申されております。」


「実質6時間で決めないといけないのか。少し厳しいな。イースは、このデスゲームのルールを理解しているかい?」


イースは当たり前のように腰に手を置き偉そうに答えた。


「当たり前じゃない。最後の一人になればゲーム終了。もしくは全員死んじゃってゲーム終了よ。でも、商品もらえるのは最後の一人の場合のみだから、実質的に最後の一人になって殺し合えばいいんでしょう。」


「主催者たる悪魔が逃げ出した場合はどうかな。商品は出ないよ。それに主催者の乱入で、参加者が殺されちゃうんだぞ。」


「だったら、全員逃げればいいでしょう。」


「悪魔に見出された者達をかい?イース?」


イースの目がパッと開き、動揺しはじめた。俺は、イースの目の前でゲームコマンドのようなモニターを映し出した。


「見てくれ、イース。閻魔コウキがこのデスゲームと化したこの世界を、あの世にある技術を使って、神術で管理下に置いた。もし、この世界で死んだとしても仮の死後の世界とも言える、仮想あの世に行けるんだ。呪われた魂を持った者はいけないがね。」


そういった瞬間、女神イースが神術を放たんとばかりに、呪文を詠唱し始めたので、俺は話をやめて詠唱を止めた。


「何を邪魔しないで。今から、メティオ級の爆裂神葬霊術を放ち、この世界を終わらせようとしたのにさ。」


「おいおい、危なっかしいな。脳筋はモテないぞ。イース。お前の目的は勇者をゲットすることだろう。このドラゴンニートの魂も可能性あるだろうが。救いをもたらせずに、よき神に近い魂が手に入ると思うのか。唯でさえ、各星の最後の血統たる魂が神の怒りで死んでしまったらどうするのだ!」


「どうすればいいのよ。」


「簡単な話さ。どうせ悪魔の仕業で滅んだ者が大半だろうから、悪魔を倒させればいいんだよ。だから、このモニターをみてみろ、あらゆる情報が手に入るからな。」


俺は、寝ているこの幼女のステータスと、自信が憑依しているドラゴンニートと、さらにはイースが憑依した人間のステータスを見せた。その中でプロフィール項目も重点に見せた。


「名前はリューイで、何々、不死故に、最後まで生き残った最後ドラゴンニートなの。すごいわね。それに、私が憑依したルーシェったら兄がかばってくれなかったらとっくに死んでいたのね。かわいそうに。祈る事しかできないか弱い女の子。それに、ノームのミーナって星の守人なんだね。あらゆることを託されたのに、人々が助かるために悪魔に騙され皆殺しにされて、本人だけ生き残ったみたいだね。危ういな・・・」


イースはステータスモニターを見ながら、ぶつぶつと独り言のようにつぶやいた。俺は少し複雑に思いながらも強硬な手段を提案した。


「俺は、この星に降り立ったすべての生命を助けたい。でも、そうすると、イースの願いは叶えられなくなるかもしれんがどうする。」


「ママが安易に勇者をあてがおうとしただけだからいいわこの際、救えるだけ救いましょう。ケイスケ。」


イースはそういうと、すっきりした顔で微笑んだ。相変わらず女神って神はずるいと思ってしまう。


俺は黒シュレに分裂させておのおのに指示を出した。


そして、俺は分裂したシュレの体を、依代にして憑依しなおした。


それから、いくつかアイテムを出して、ドラゴンニートの体と幼女ノームをアイテムに封じた。


分裂したシュレたちは、さらに、この世界に散らばって隠れている者達は確保しようと散会した。作戦がわからないのかイースは少し戸惑っているようなのでちょっと説明した。


「プランBって言ってもわからないか。イース。今から少し強引にことを進めるよ。まず、この世界に散らばった者達は、あらかじめ用意された武器をすでに手に入れているだろうから、それを取り上げながら確保する。そして、ルールがあってないようなデスゲームの裏に暗躍するいる、俺たちみたいな間者を片っぱなしに確保するからな。逃げながらでも、空から逃げてくる悪魔も当然、確保するからな。」


「そんな事できるの。」


「できるみたいだよ。神々と女神達の加護って便利だよね。あらゆるチートができるからね。もしかしたら、俺の出番さえないかも知れないぞ。」


と、いってるそばから、シュレの分身が石化したエルフらしき娘を抱えてきた。


「こちらに矢を入ろうとしていましたので、石化させました。それに、死にかけた3名ほどの生命体がいたので取り急ぎ宝玉に封印しときましたと分身2名から連絡がありました。」


「わかった。落とし穴などの罠を駆使してもよい。無力化したければ、痺れ麻痺毒もOK、その代わりに必ず昏倒させておけと伝えろシュレ。ステータス偽装や隠す者がいるかもしれんから、遠距離で無力化に努めるようにな。それに、確保したら、必ずステータスで、○○星における最後の生き残りの称号を確認するんだぞ。」


「わかりました、主様。邪神との闘いを思い出します。気を抜かぬよう作戦を遂行させます。」


シュレが忍者の如く、森に消えると、俺たちは来た道を戻るようにコロシアム手前の繁みに潜んだ。しかし、1時間もしないうちに黒シュレがコロシアムの中央から煙幕を張った。


爆音と奇声とともに再び静けさがやってきた。

そして、魔導書のような、人より大きな本を担いで黒シュレが女神イースが憑いている人間の前に現れた。


「報告します。待ち伏せにより、6名を確保し、なおかつ悪魔退治をさせたことにより魂を解放させました。その中の一人は人間の救世主となる男でしたが心が弱く邪神に見出されて闇落ち寸前でした。」


「心が弱いのは悪魔も一緒だからな、その気になれば簡単に強くもなれるよ。さて、悪魔たちも更生させちゃうかな。シュレ、悪魔退治といっても消滅しきれなかっただろう。」


「ですから、いつものように、魔導書に封印させ、いつでも召喚できるように躾をほどこしております。それに、まだ、しつけてない悪魔も6匹ほどおります。」


黒シュレはにやっと笑っていた。どうせろくでもないことを考えているのだろう。

「まさか、黒シュレさん。サキやイリヤに躾のやり方を教えるつもりなのかな。」


「いえいえ、女神イース様やテラ様にも、躾ていただこうと考えております。でも、まずは、イース様が憑依している人間とドラゴンニートの魂を救済することをしませんと。」


不敵に笑う黒シュレはまさにアサシン・・・暗殺者になっている。まさに仕事は完璧で、既に黒シュレから分身したシュレ軍団は戻っていた。残っているのは俺とイースの憑依しているシュレの分身のみであった。背筋に寒いものを感じた俺と女神イースはデスゲームが誰も死なずに終わったことに安堵した。


空からの光に包まれた俺たちは、亜空間に呼び戻されるのであった。


そこには二人の妻と女神テラ、そして閻魔コウキが酒を酌み交わしながら雑談を交わしているのであった。


「おかえり、ケイスケ。女神テラってすごいのよ。アース様を呼び出したとおもったら、すぐに悪魔たちを封印したのよ。逃げた悪魔もシュレたちが確保するし、閻魔コウキったら、戦略級どころか惑星級の神術をエリア展開のパターンを変えていったのよ。」


「それでアース様はどこに?」

「それが賭けがどうのっていってお酒とつまみを出していってしまったのよ。いっしょにのみたかったのに残念。」


「まさか、賭けって。アース様、何を考えてるのか。コウキは事情知っているのか?」


コウキは酒に酔いながらも、寝たふりをしだした。それを見て、女神テラはふざけたようにいった。


「さすが閻魔コウキ。いい仕事するわね。では、チュートリアルは終わりってことで、本番行きましょうか。そうだ、よかったら、イリヤちゃんもサキちゃんも行ってみる?刺激的よ。アマミコいや、ケイスケがいろいろ教えてくれるからね。」


俺とイースは顔が青ざめたときには、時間が遡ったかのように闘技場の真ん中にいた。


そして、2週目、3週目があるゲームのように妻たちが満足するまでデスゲームのループは続くのであった。悪魔の調教も完璧にこなせるようになったころには、新しい絆も生れたような気がした。


もちろん、すべての囚われた魂たちが解放されたのは言うまでもない。

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