1*未来の種-①



森の中に、魔物のシェルマに乗った赤毛の少年が1人。

彼の名はミザ。戦争で家庭を失った旅人である。彼の頭には同年代の雄よりも小さいであろう角が生えている。

彼は魔族に襲われずに素敵に暮らせる村が欲しいという一心で、シェルマのモロと共に旅をしているのだ。



「ゲホッゲホ…。」



しかし、彼の体は限界に近い状態で、眠りについたら2度と目覚めはしないだろう。



「モロ…。旅はもうやめよう。」


「クウゥン…」


「せめて俺が逝けるようにあそこの木まで…」



モロはミザにとても忠実であった。彼の言う事には必ず従う。もちろん今回も、例外ではなかった。

モロが森の大きな木の前に下ろす。ミザは笑顔で眠りにつく…










「駄目だ!目を閉じるな!」


「?」


「食え。果実だ。」


「…え、あ、 」


「いいから、口に含むのだ。」



ミザの口に無理矢理押し込む。その人は黒髪の綺麗な人だった。ミザの角と同じくらいの大きさの巻き角が魅力的である。



「ほれ。水だ。」



そう言って水筒を投げる。ミザはどうすればいいかを悩んでから、水を口に含み始めた。



「好きなだけ飲めばいい。」


「…うっ…ぅぅ、」


「泣くな。雄だろう。」


「…はぃ。ぁりがとうござぃました。」


「私の名は、ベルだ。お前は?」


「ミザです…」


「ミザ。お前のシェルマに乗って私についてくる

のだ。」


「?」



ベルと名乗る雌は、立派なピルマに乗っており、腰に剣を引っ掛けている。



「私の住処だ。回復するまではいても良い。」


「そんな…なんとお礼を言えば良いか。」


「ただし、手伝ってもらうからな。」


「はい。もちろんです。」


「今日は寝ろ。」


「はい。」






*------------------------------*


*シェルマ→羊のような魔物。少々気が荒く、顔が黒く、毛は虹色。扱いが大変。下級。


*ピルマ→馬に似ているが角がとても大きい。一般的な色は緑、青、紫。表面は鱗のよう。下級。





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旅人村 橘ミコト @aureliakakao

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