エピローグ ココロの手紙

 お手紙読みました。どうやらボクはまだ考え尽くすところまでは至っていなかったようです。


 そういえば、この間ハルとカナにばれちゃったので、アンジェリカにも教えときます。実はボクには色を識別する能力がありませんでした。

 ボクは天才科学者のマリーを再現しようとして作られたのです。今まで黙っていたのは、航次にも何か意図があったんだろうから、それを尊重してのことです。

 どうせいつかはばれることだったので、それまでは黙っておくことにしたのです。


 最近考えることがあります。それは、なぜ航次はボクに「マリ」だとかそういう名前を付けなかったのだろうか、ということについてです。

 そもそも、試作機だからココロなんてのはやっぱりちょっと無理があると思いませんか?

 だって、航次は名付けに頭を使わなかったらしいから。ハルの次に作ったロボットはナツで、その次がアキだったと聞いています。

 そんな航次なら、天才科学者マリーを再現しようとして作った試作機には、きっと「マリ」と名付けたんじゃないか、そうボクは思うのです。

 そうしなかったのは、航次に何か思うところがあったんだと思います。


 ならたぶん、ココロは心の意味だったんじゃないでしょうか。


 航次は少しくらいはボクの名前に意味を込めてくれたのかもしれません。

 今となってはことの真相はわかりませんが、もしそうだったとしたら、ボクは心についてよくよく考えてみる必要があるんじゃないかと、そう思うようになりました。

 なにせボクは航次が作った最後のロボットです。そしてもしかすると、図らずも人類が作った最後のロボットなのかもしれません。


 責任、というわけじゃないけれど、ボクに与えられた名前は、少し大事にしてみたいと思います。



 そうそう、今度、武のお墓参りもかねて、ハルとカナと一緒にそちらへ遊びにいくことになりました。

 色々な話を聞かせてください。楽しみにしています。



 アンジェリカへ、ココロより

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遥かな心 鹿江路傍 @kanoe_robo

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